STORY 20 ページ20
「売られたぁ?」
ロザリアは起き上がると毛布を身体に巻きつける。意識がはっきりとしたからか、今更裸を見せているのが恥ずかしくなってきた。
「とても貧しかったから、そうすれば楽になるって言ってたわ」
「売られた時はいくつだった?」
「七つの時よ。その時から宿で雑用をやってた。でも『売られた』にしてはまともな仕事で安心した」
「そうだなぁ。宿は宿でも『淫売宿』よりはマシだろう。ははっ……その貧相な身体じゃろくに売れないか」
「……あなたさっき『良い身体』とか言ってなかったっけ。どっち?」
「……お前こそ羞恥心あるのかないのかどっちなんだよ」
ジョンはため息をついた。やはりなんだかんだ言ってもこういうところがガキだ。
「なぁ」
彼はふと思い立ってロザリアを押し倒す。そのせいで――少し手加減したためそこまで強くはなかったものの――当然ながら彼女は床に頭をぶつけた。
「痛ったああ……何すんの!」
「お前、処女か?」
「え、だってまだ子供だもの」
どうも調子が狂う。
これまで何人もの女を相手してきた彼だったが子供が捕まるのは初めてだった。子供らしくただ怖がってくれるなら話は別だが彼女のような妙に達観した子供は実に扱いづらい。
「処女のまま処刑なんて勿体ねぇだろ? 死ぬ前に良い思いさせてやるよ」
「嫌よ。男の人はそうやって無理やりやってくるくせに生活が苦しくて身体を売ってる女の人に対して『軽い女』なんて言って馬鹿にしてるんだから。それに良い思いって言ったって女の子は痛い思いするしそれで妊娠したら女の子が悪いってことになるのよ」
「…………」
ジョンは黙って立ち上がる。彼女には一瞥もくれずに去ろうとした彼の手を身体を起こしたロザリアが掴む。
「……なんだ小ネズミ。さっきの、本気にしてるのか。からかっただけだ。少しでもお前の怯えたところが見たかった。ガキには興味ねぇから安心しろ」
喋っている間もジョンの視線は格子のほうをむいたままだったがロザリアの言葉に彼は振り返ることとなる。
「私を殺したいって言ったのは本当?」
「なんだよ急に」
「本当なの?」
「……本当だ。死にたくなったか?」
ロザリアはそこで視線を落としてぽつりと呟く。
「もし私が魔女と言われて処刑されることが決まったらその前に――あなたの手で殺して」
それに対する彼の答えはひどくあっさりしたものだった。
「ああ。いいぞ。その時が来たら、な」
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田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» ただでさえ無実の女性を平気で殺しまくってる人ですからね。どこかもう自分でもどうしようもできないほど壊れてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 田無苑珠さん» もう色々とアレな人になっちゃってますねミスター・マシュー (2017年6月5日 20時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» 読んでくれてありがとうございます!はい、言いましたw……と、言っても実は恋愛という意味ではなくて、本人もよく分からない感情をマーロンに抱いてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 面白いです!マシュー、……あ、愛してる…って言いました……? (2017年6月5日 10時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ロイヤルストリートさん» ありがとうございます!好きになってくれて嬉しいです (2017年5月23日 13時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:田無苑珠 | 作成日時:2017年5月5日 13時