STORY 3 ページ3
それからまもなくしてマーロンは父親の仕事の関係で今まで住んでいたサフォークを離れ、とある町で暮らすこととなる。折角マシューと仲良くなったばかりだったので残念な気持ちでいっぱいだった。せめて手紙だけでも書けるよう、連絡先を聞いておけばよかった。しかも姓すらも聞いていないなんて。『マシュー』という名前は珍しくもないから簡単には見つからないかもしれない。
「ここもなかなか良いところじゃないか」
「ふん、どうだか。むしろ前よりも狭いじゃないか」
ぶつくさ文句をたれ始めた妻を困ったように一瞥した後、明るい表情に切り替えてスティーブはマーロンに向き直る。
「マーロンも、ここなら友達が出来そうだな」
「うん……そうだね」
人見知りなせいでずっと住んでいた町でさえも誰とも親しくなれなかったのに右も左も分からない状態で果たして大丈夫なのだろうかと心配になったが喜んでいる父親を前に暗い顔なんて出来ない。マーロンは無理やり笑顔を取り繕った。
そして三年後、十歳になったマーロンは外に出ず、一日のほとんどの時間を家での読書に費やすようになった。
スティーブは当然、そんな息子を心配した。本を読むことはとても良いことだが少しは外に出て陽の光に当たった方が良い。本を持っていっても一向に構わないから散歩くらいはしたらどうかと提案してみたこともある。マーロンもその時は「わかった」と言っていたが未だに家にこもりがちだ。かといってマーロンはまだ子供だ。無理強いしないで出来るだけ好きなことをさせてやりたい。
そんな父親の心配を余所にマーロンは今日も部屋で本を読んでいた。窓を開ければ町の喧騒が聞こえてくる。何をしたのか知らないが逃げる男を箒をかざして追いまわす女の姿もよく見える。一人の女が夫と思わしき男を怒鳴りつけた時、マーロンはびくりとすくみあがって速攻窓を閉めた。
外に出るのが嫌いな訳ではない。たまに買い物に出かけた時に会うパン屋の主人とはすぐに仲良くなれたし、図書館の主人とも秘密を共有し合える仲になれた。この町自体はとても好きだ。ただある一点を除いて。
マーロンは女に対して極度の恐怖を感じていた。見る限りこの町で優しいと思える人に会っていない。上から下まで品定めするような目で見られ、あからさまに馬鹿にするように笑われたこともある。気性も荒く、意地も悪い。それは彼の母親にも言えることだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» ただでさえ無実の女性を平気で殺しまくってる人ですからね。どこかもう自分でもどうしようもできないほど壊れてるんです。 (2017年6月5日 20時) (
レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 田無苑珠さん» もう色々とアレな人になっちゃってますねミスター・マシュー (2017年6月5日 20時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» 読んでくれてありがとうございます！はい、言いましたw……と、言っても実は恋愛という意味ではなくて、本人もよく分からない感情をマーロンに抱いてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 面白いです！マシュー、……あ、愛してる…って言いました……？ (2017年6月5日 10時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ロイヤルストリートさん» ありがとうございます！好きになってくれて嬉しいです (2017年5月23日 13時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：田無苑珠 | 作成日時：2017年5月5日 13時
