STORY 4 ページ4
クラウディア・ヒューイット。彼女は夜、必ずといっていいほど酔っぱらって帰ってくる。そして何かあると何の罪もない夫を狼のような鋭い目で睨みつけ、当たり散らすのだ。ひどい時には暴力も振るい、その矛先はしばしば息子のマーロンにも向けられた。長い黒髪を振り乱し、細く骨ばった手で掴みかかってくる。スティーブは自分よりも背の高い妻の前に怯えることしか出来ない。そんなことがあるせいでマーロンはたびたび町で背が高く痩せ細った灰色の瞳の女を見るたびに心臓が縮み上がるような感覚を覚えた。
かといって昼間は優しいのかというとそんなことはなく、夜の時のように暴れたりこそしないものの、四六時中悪態ばかりついて一度も夫のスティーブに優しくしているところなど見たこともなかったしマーロンに対しても素っ気なかった。クラウディアは息子とは逆に、一日のほとんどの時間を外で過ごしている。昼過ぎに起きて外で食事を取り、日が暮れるとまた別の店で夕食を取る。そして適当に町をぶらぶら歩いた後、酒場に行く。これの繰り返しだった。前に住んでいた町の時とは違い、彼女はいつも一人でいて、服装も他の女と比べると男性寄りで風変わりとも言える。とある男は以前絡んだら酒瓶で殴られそうになったとおっかなそうに仲間に話していた。
マーロンはふと考える。どうして父はあの凶暴な母と結婚したのだろうか。それともおそらく、出会った頃はまだ優しかったのだろうか。母は僕のことを愛しているだろうか。もし自分だったらあんな怖い人とは結婚出来ないどころか近づきたくもない。
マーロンの気の弱い性格は紛れもなく父親譲りのものだ。いや、それだけでなく髪以外のほとんどと言える。黒髪だけが母親のを受け継いだのだろう。結婚する前、クラウディアは画家をやっていたらしい。それを聞いた時、妙に納得したのを覚えている。常に自分のペースで生きている母は誰にも邪魔されず一人で絵を描いているのが似合いそうだ。マーロンは一度こっそりクラウディアの部屋に入ってみたことがある。荒々しい彼女の性格とは裏腹に部屋は几帳面に整えられており、隅にある机の引き出しには画材が入っていた。そんな中、棚を物色していたら案の定何枚か絵を見つけた。色彩は暗く、彼女が描いた町は全て夜の風景だった。真似して何度も描いてみたものの一向に上手くなる気配はない。果たして絵の才能は受け継がないのだろうか。
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田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» ただでさえ無実の女性を平気で殺しまくってる人ですからね。どこかもう自分でもどうしようもできないほど壊れてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 田無苑珠さん» もう色々とアレな人になっちゃってますねミスター・マシュー (2017年6月5日 20時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» 読んでくれてありがとうございます!はい、言いましたw……と、言っても実は恋愛という意味ではなくて、本人もよく分からない感情をマーロンに抱いてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 面白いです!マシュー、……あ、愛してる…って言いました……? (2017年6月5日 10時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ロイヤルストリートさん» ありがとうございます!好きになってくれて嬉しいです (2017年5月23日 13時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:田無苑珠 | 作成日時:2017年5月5日 13時