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STORY 11 ページ11

地面から生えたような家に足を踏み入れると正面奥に暖炉があり、右を向けば地下への階段が見えた。

「適当にそこ座ってて」

 クラウディアが指差した左側の離れた所には木製のテーブルと椅子がある。何となく一番奥の椅子に腰かけるとマーロンは落ち着きなく周りを見渡す。今居る場所より奥に台所があることに気づいてからそこに置かれているいかにも魔女が使ってそうな黒い鉄製の鍋にどうしても目がいってしまう。
 台所に向かったクラウディアは鍋を見つめているマーロンに呆れたような顔をする。

「あんたを食ったりしないから安心しな」

「僕の心を読んだの!?」

「そこまで力はない。まさか本当にそんなことを考えていたなんて」

「ご、ごめん。でも『そこまで』ってことは何かすごい力とかあるの?」

「予知夢、簡単に言えば少し先の未来に何が起こるか夢で分かる力だね。そして私と同じこの力を持っている人間が見た予知夢の内容も分かる。それ以外は何の力もない」

 自分の母親がそんな力を持っていたなんて想像もしていなかった。確かに『魔女かもしれない』とは思っていたけどまさか本当に……。

「あんたをここに『攫った』のはその予知夢を見たからだ。少しの間は町に戻らない方がいい」

 クラウディアが紅茶の入った二つのカップを運んで来つつ、自分も向かいの椅子に座る。訊きたいことは山ほどあるがとりあえず先に気持ちを落ち着けようとマーロンは紅茶を一口啜った。

「このお茶、何? 飲んだことない味するけどすごく美味しい」

「……ありがとう」

「え?」

「なんでもない」

 何故か目を逸らされる。落ち着いたは良いものの、何から訊くべきだろうか。思案しているとクラウディアはマーロンの束ねた黒髪を興味深げに見た。

「前から気になってたんだけどさ、何でそんなに髪長く伸ばしてるんだ? まあ似合ってるけどさ」

「え、本当? ありがとう」

「ああ、うん……」

 また目を逸らされた。何とも母らしくない。一体どうしたのだろうか。

「マシューがね、『長く伸ばした髪も見てみたい』って言ってたから」

「マシュー?」

「うん。前に住んでた町でよく会ってた友達、なのかな。牧師さんの息子だって」

「ああ、あいつか。彼には悪いことをしたよ。私はただ、女達の話を聞いていただけであいつを陥れるようなことはこれっぽっちも言ったことはないんだけどマシューからしたら同じようなものだったんだろう」

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田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» ただでさえ無実の女性を平気で殺しまくってる人ですからね。どこかもう自分でもどうしようもできないほど壊れてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 田無苑珠さん» もう色々とアレな人になっちゃってますねミスター・マシュー (2017年6月5日 20時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» 読んでくれてありがとうございます!はい、言いましたw……と、言っても実は恋愛という意味ではなくて、本人もよく分からない感情をマーロンに抱いてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 面白いです!マシュー、……あ、愛してる…って言いました……? (2017年6月5日 10時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ロイヤルストリートさん» ありがとうございます!好きになってくれて嬉しいです (2017年5月23日 13時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:田無苑珠 | 作成日時:2017年5月5日 13時

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