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急患もなく、重体の怪我人も居らず、平和なとある日の蝶屋敷。


その一室にて、手術に用いる医療用のメスを手に、怪しげな笑みを浮かべる一人の女がいた。




「うふふ。この曲線。ふふふふ·····。」


「Aさ〜ん!

····って、また医療器具見てるんですか?」



「やぁなほちゃん、どうしたの?怪我人?」


「いえ!先程しのぶ様から煎餅を頂いたので、お茶のお誘いに····。」


「うぅん、それは是非とも行きたいんだけど。生憎これから往診の予定が入っててね。ちょっと出ないとなんだよ。」


「そうなんですか····。じゃあ、Aさんの分は取っておくので、お暇なとき食べて下さい!」


「優しいねぇ。そうさせてもらうよ。ありがと。

さて、そろそろ迎えも来るだろうし、行こっかな。」



「そう言えば、どこまで行かれるんですか?」


「ん?お館様のとこ。」





**



さて、隠の方に運んでもらうこと幾許か。



着きましたよ目的地。



いやぁ、相変わらずでかいわぁ。産屋敷家。



「お待ちしておりました。A様。ご案内します。」


「お願い致します。」



門の前で御息女であろう方に出迎えてもらい、

一族揃って美形だよなぁ····とか考えつつ、後を着いて行けば、ある襖の前で足を止める。


「着きました。

父上、お医者様の西城寺様がいらっしゃいました。」


「どうぞ中へ。」



中から聞こえてきたのは、落ち着いた心地の良い声。



「失礼致します。」


「やぁ、おはよう。」


「おはようございます。調子はいかがですか。」


「うん、この前よりは大分楽になったよ。Aの薬は、相変わらずよく効くね。」


「それは良かったです。それでは早速ですが、始めさせて頂きますね。」






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作者名:しゃも | 作成日時:2019年9月16日 10時

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