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那須side





海に着くと、打ち寄せる波が心を落ち着かせた。





白く、さらっとした砂浜の上を裸足で歩く。





後ろを振り向くと、2人分の足跡が俺たちを追う。





横並びで歩いて、
素足のそのままで、波打ち際の方まで寄った。





右足、左足、と順番に流れてくる海水が染み込んでくる。





すると突然、





かすみが少し先を走って俺を置いていった。





そしたらまた急に





足を止めて振り返り、向かい合わせになる。





『雄登ー!』





すぐそこという距離にも関わらず、





大きな声で俺を呼んで、手をブンブン振る。





「かすみ!そんなに大きな声出さなくても聴こえてるよ笑」





視界に入る無邪気な姿に、笑って答えた。





海へ行った時の定番の遊び。





爽やかな空気と一緒に楽しくなった。





『じゃあこれも聞こえるー?』





次に声を出した時、波の音が少し小さくなった。





『私!明日は…!もう、、』





言葉が声に出される度に、その活気が無くなっていく。





顔が暗く落ちていく様子がどこかぎこちなかった。





その瞬間、





『もう……、この世にはいないんだって』





衝撃の事実が波に乗せて言葉に出た。





最後の言葉は、小さな小さな声だったのに、





波の音と合わせて発せられたのに





ハッキリと、耳のそばで話すように聞こえてきた。





どれほど怖くて恐ろしくて悲しい言葉なのに





かすみは、全部受け止めたような微笑みをこぼしていた。





「なんでだよ、、」





そんな姿を見て、





俺の足はかすみへと走っていた。





波打ち際を、バシャバシャと飛沫を上げながら。





「かすみ!」





平気な顔をするかすみを、





強く、思いっきり抱きしめた。





俺の精一杯の気持ちを込めて。





腕の中にいるかすみは、





手が震えて、とっても小さかった。





「平気な顔すんな…俺はすっごく怖い」





そう言って、





かすみから抱き返された手は、俺をぎゅっと掴んだ。





『雄登……』




「……うん」




『大好きだったよ』




「……。」







耳元で、涙を啜る音が静かに聞こえてきた。





好きという言葉に返事ができない弱い俺。





だけど、少なくとも心の支えになったのだろうか。





波の音がまた徐々に大きくなって、





俺たちの足跡を消して行った。















そして……。













次の日、かすみは息を引き取った。





.

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作者名:ホワイトチョコ | 作成日時:2022年6月20日 21時

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