Episode.175 ページ33
「A、アイツらなら大丈夫だ」
リゾットがそう言ってくれるから同意したが、内心は心配でたまらなかった。でも、ついて行ったところで何もできないし、ジョルノ・ジョバァーナが殺すという未来は変わっていなかった。これはつまり、ある種の運命なのだろう。ならば、今は仲間と共にこの瞬間を生きていられていることを喜ぶんだ。みんな死んでしまっていたかもしれない、その未来が来なかったことを。
「私を刺した男の子ね」
「ボスについて知っていたという奴か」
「多分、ボスのこと大好きなんだよ」
あの時、結果としてAは少年のことを応援してしまったわけで。自分で自分の首絞めたことになるが、あの時の、あの表情。もっと別の形で会いたかったと言った時の表情は、悲しそうだった気がする。意識が朦朧としていたから、気のせいかもしれないけど。
「何となく今思い出しただけで、深い意味なんてないんだけどさ」
「ああ」
「あの子ともっと、話したかったなって」
ドッピオくんがボスの部下かもしれないとかは抜きにして。そう、彼が言っていたように、別の形で出会えていたら。彼の話しをもう少し聞いてみたかった。
彼は死んでしまうだろうか。日記には、ドッピオの名前が出てこなかった。しかし、少年という単語はちらほら見かけた。その少年がドッピオかは分からない。
「ブチャラティ達が帰ってきたら」
「……」
「……どうしようね」
驚くくらい何も浮かばない。リゾットも、さっきは大丈夫だなんて言っていたくせに。なんだか全てを彼らに任せてしまうのは、そう、なんだか。
「あ!Aとリーダー来たぜ」
遠くからそんな声がする。
釈然としない気持ちはありつつ、しかしこれが最前なのだと思う。Aはこのチームの正式なメンバーですらない。Aが守りたかったのは、ここだ。この場所だ。ブチャラティ達が戻るまで上手く笑える気はしないが……
ああ、本当に嫌になる。
やれることはやっただろという声と、
嫌な役割も任せてしまった罪悪感と、
みんなといれて幸せだと思ってしまうことと、
何もかもがやるせなくて、モヤモヤとしてしまう。
「A、車は向こうだ」
「あ、あぁ。うん」
今もみんなが戦っているかもしれない。それなのにいいのか。ここにいて。それで、
「余計なことは考えんな」
ギアッチョにそう言われ、それでも目線を足元に下げる。みんなは何か喋っているが、何も入ってこなかった。
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Crow(プロフ) - 定期的に読みたくなっちゃいます。5、6周はしてるから内容覚えちゃいました笑 これからの活動も応援してます (2020年2月9日 15時) (レス) id: e5ce766b8a (このIDを非表示/違反報告)
まどろみ(プロフ) - るこさん» こんな何度も感想下さって本当に有難う御座いますッ!お互いお疲れ様です!いつかリメイクした作品も読んでいただけると嬉しいですm(*_ _)m (2019年2月25日 23時) (レス) id: 2cd0a82a72 (このIDを非表示/違反報告)
るこ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!毎度のこと一つ一つのお話が面白く、描写の仕方や、感情の表現の仕方などとても凝っていて、本当におもしろく話に引き込まれました。そして本当にお疲れ様でした!!番外編楽しみにしていますね!!! (2019年2月25日 17時) (レス) id: c7737debdf (このIDを非表示/違反報告)
まどろみ(プロフ) - ごみさん» ありがとうございます!面白いと言ってもらえて嬉しい(泣)番外編もお楽しみください<(_ _)> (2019年2月25日 17時) (レス) id: 2cd0a82a72 (このIDを非表示/違反報告)
ごみ(プロフ) - 完結お疲れ様でした!途中から見始めましたが本当に面白かったです!番外編楽しみにしてます! (2019年2月25日 16時) (レス) id: 83e9aedb9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まどろみ | 作成日時:2019年2月23日 20時