幸福論 =4=

Episode.174 ページ32

＿＿Aは不運な女だ。

リゾットは、彼女の背を見て思った。数ヶ月後には彼女がイタリアに来て二年が経つわけだが、それにしても本当に不運だと思う。本来であれば、こんなこと彼女には何の関係もないのだ。彼女がここまでして何かしようとする必要はどこにもない。

そんなスタンドを得てしまったがために、
そんな性格であったがために、
彼女は今、こんな危険な場所にいる。

これが幸せなのだろうか。彼女は最初、幸せになりたいと言っていた。だから、まだ生きていたいのだと。こんな状況に陥っているのに、Aはこれが幸せだと本気で思っているのか？

そんなわけない。これが幸せであるわけがない。

ただ彼女は、日本にいた頃よりはマシなんだとよく言う。隣に人がいてくれるから、それが何よりも幸せに感じると。こんな危険な目にあってまで自分達の隣に立とうとしないで欲しかった。

彼女は道中言っていた。
命を賭けられる覚悟や決意なんて自分にはないと。だからブチャラティ達を送り出すしかできないんだと。Aは俺たちに命を賭けてくれているじゃないかと言えば、彼女は笑った。


命を乗っけた天秤に、命を乗っけるのは普通だと。

そうでなきゃつり合わないだろうと。


彼女はやはり、不運な女だ。
自分達のような人間の隣にいたい、ただそれだけのために、命を賭けてしまうのだから。本当に、どうしようもなく、自ら不運の中に飛び込んでいく。
＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿＿

｢ブチャラティとアバッキオとジョルノ、三人の未来を読んだよ。結構雑ではあったけど｣


Aは大雑把に全てを話した。本来これは禁じ手であるが、もうこれが最後になるかもしれないのだ。これから起こる可能性について話していく。

ボスに追われること、ボスの仲間のこと、そして、ジョルノから読んだボスの正体、スタンド、ポルナレフさんについては癪だがあとで空条承太郎に報告しておこう。

とにかく全てを余すことなく伝える。これが彼らの生存率を上げることになればと。あと、アバッキオとナランチャから赤いページが消えていなかった。しかし、ブチャラティから赤いページが消えた。今後の未来は分からないが、みんなとまた無事に出会えることを信じて。


｢ここまでしか手伝えなくてごめんなさい｣

｢Aは自分の心配をしていればいいさ｣


最後、何か声をかけようと思ったけれど、どれも言えなかった。









(ただ黙って)
(見送った)
(何も言えなかった)

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