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人生最初の記憶は、両親が激しい諍いを繰り広げる──そんな、生暖かい現実の血が通った光景だった。何をそんなに言い争っていたのかは知らない。だいたい、もう聞けないのだ。自分がそれを知りたいのかそうでないのかも分からないけど、とにかく聞けないことは確かだ。
私の両親は、「旅行に行くから」という理由で、三歳の私をウィーズリー夫妻に預けたきり、帰ってこなかった。その頃のモリーさんはお腹に子供を身ごもっていて──ビルのことだ──アーサーさんは仕事に追われていた。そんなところに私が転がり込んできた。普通なら邪険にされるようなものなのに、ふたりは、私が寂しい思いをしないように気遣ってくれた。
11月、開け放たれた窓からの
もちろん、毎日が楽しくなかったわけじゃない。双子のイタズラには手を焼いたし、散々笑わせてもらった。パーシーに勉強を教えてあげるときも、チャーリーにドラゴンのことを教えてもらうときも、ビルと他愛もないことを話すときも、ちゃんと全部、楽しかった。でも、ふとした時に、私とみんなの間になにか薄い膜のようなものが感じられた。
その違和感は体の中に蓄積していき、ホグワーツを卒業した17歳の誕生日、私はある決心をした。──縁を切ろう、と。家出、と形容するのは、なにか右と左で靴下を履き違えたような割り切れなさがある。既に私は17歳なわけだし、一人暮らしという言葉の方が適しているだろう。かと言って、クリスマスなどに戻ってくる気もない。文字通り、縁を切るのだ。さっぱり違和感を清算して、ひとりで、生きていく。そういう決意が私の中にはあった。
「今までありがとうございました。ご迷惑をおかけしました。もう二度と会いには来ません。」
そんな置き手紙を置いて、家を出た。
夏の夜の爽やかな、それでいて寂しさを含んだ風の中を歩いていく。荷物をまとめたかばんは案外軽かった。天気が良く、夜空は鮮明に見えた。
「星、よく見えるなぁ。夜空って案外きれ──」
「A!」
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狸ノ木(プロフ) - そると。さん» コメントありがとうございます! 私も結構気に入っている話なのでそう言っていただきとっても嬉しいです……! たぶんころっと落ちちゃいますね☺️(そんな機会があればですが!) (2022年4月5日 17時) (レス) @page37 id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
そると。(プロフ) - 最後のジニーのお話...めっちゃ好きです...あんな言われたら落ちるしかなくない...??? (2022年4月5日 1時) (レス) @page36 id: 49e4342c2d (このIDを非表示/違反報告)
狸ノ木(プロフ) - 弁当にトマト入れないでさん» コメントありがとうございます〜!!こんなに素敵な言葉を頂いてもいいんでしょうか……すごく励みになります😭してみたされてみた、また書きたいので出すと思います! 楽しみにしてて下さい💞 (2022年2月15日 7時) (レス) id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマト入れないで - してみたされてみたまた出して欲しいです!無理だったらすいません!!お話作るの天才すぎ!!めっちゃいいお話だらけ! (2022年2月14日 22時) (レス) id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマトを入れないで - 私もパーシーと、オリバー大好きだから主さんのお話大好きです! (2022年2月14日 22時) (レス) @page16 id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
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