ウィーズリー家のゼロ番目 / Bill ページ41
肩に響く衝撃。その反動で階段から転げ落ちそうになるが、すんでのところで手すりを掴み、なんとか転がらずに済んだ。
「お前、本当にウィーズリーなのかよ」
「そうだよ。容姿も全然違うし、勝手に言ってるだけなんじゃねぇの?」
私より恰幅も良くて、岩の壁を想起させるようなスリザリン生の三人がそう言った。こんなことを言われるのは初めてじゃない。言われ慣れたその言葉に、今いちど浸ってみる。
私のファミリーネームは紛れもなく、ウィーズリーだ。住んでいる家は「隠れ穴」と呼ばれていて、両親はアーサー・ウィーズリーとモリー・ウィーズリー。弟と妹を合わせると、七人になる。──それは全て、書類上の話だ。ウィーズリーと聞くと、たぶん、誰もが赤毛にそばかすを想像するだろう。
「なぁ、どうなんだよ。答えろよ」
また肩を押されかける。慌てて躱すと、舌打ちが返ってきた。私は思いのほか顔をしかめてしまっていた。そんな私の顔にはそばかすはひとつもなくて、髪色は暗いブラウン。グリフィンドールではあるけれど、ほかの生徒からすれば、私がウィーズリーを名乗っていることが「詐欺」や「嘘八百」のように見えるらしい。
口を真一文字に結んだまま、うんともすんとも言わない私に痺れを切らしたのか、スリザリン生は拳を握りしめた。私はとっさに顔を覆う。しかし、その拳はいつまで経っても飛んでこなかった。少しして瞼を開ける。
「──ビル」
「Aは正真正銘、僕の姉さんだ」
ビル・ウィーズリー。私より少し背が低いが、学年の中では高い方らしい。彼の髪は燃えるような赤毛で、澄んだ水色の瞳を細めながらスリザリン生が振り上げた拳を掴んでいる。その瞳の奥には、炎のようなものが揺れていた。
「そんなふうに突っかかって姉さんに減点されても、文句は言えないぞ」
スリザリン生は未知のものを発見したように私の胸のあたりに光るPの監督生バッジを見て、唸りながら退散して行った。監督生の恩恵ってちゃんとあるんだな。
「ふー……」ビルは額を拭った。「姉さん、監督生なんだからずばっと減点しちゃえばいいのに」
「ありがとう、ビル。でも、面倒事を起こしたくないの」
「姉さんは平和主義だね。でも、あんなこと言われて悔しくないの?」
私は自分のローファーを見つめた。暇な時間で磨き上げたそれには、私の曇り空の顔が映っている。
「──悔しくなれないのかも。ごもっともだから」
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狸ノ木(プロフ) - そると。さん» コメントありがとうございます! 私も結構気に入っている話なのでそう言っていただきとっても嬉しいです……! たぶんころっと落ちちゃいますね☺️(そんな機会があればですが!) (2022年4月5日 17時) (レス) @page37 id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
そると。(プロフ) - 最後のジニーのお話...めっちゃ好きです...あんな言われたら落ちるしかなくない...??? (2022年4月5日 1時) (レス) @page36 id: 49e4342c2d (このIDを非表示/違反報告)
狸ノ木(プロフ) - 弁当にトマト入れないでさん» コメントありがとうございます〜!!こんなに素敵な言葉を頂いてもいいんでしょうか……すごく励みになります😭してみたされてみた、また書きたいので出すと思います! 楽しみにしてて下さい💞 (2022年2月15日 7時) (レス) id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマト入れないで - してみたされてみたまた出して欲しいです!無理だったらすいません!!お話作るの天才すぎ!!めっちゃいいお話だらけ! (2022年2月14日 22時) (レス) id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマトを入れないで - 私もパーシーと、オリバー大好きだから主さんのお話大好きです! (2022年2月14日 22時) (レス) @page16 id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
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