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「うん、学生の頃ね」彼女は空を見ていた。「大丈夫っていったら、おまじないになる気がして。本当のことじゃないのにね、大丈夫、なんて。だから……私たちは今、ちゃんと言おう」
「……何を?」
「大丈夫じゃない、って。おまじないは呪いにもなること、私が一番知ってるから。だから、呪いになる前に、ね? パースも」
フレッドが亡くなったこと、ホグワーツの戦いで色んな人が亡くなったこと、今後の魔法省のこと、家族のこと。これから向き合わなければいけない諸々のこと。
「──あぁ、大丈夫じゃない」
もう一度、Aが僕の手を優しく包み込んだ。少しの寂寞を乗せた5月の風が、涙をさらっていく。なんだか、ホグワーツに通うことが決まったあの日のような懐かしさがした。隣にはAがいて、俯くようなことはなくて、二人の距離は近かった。
「本当は、Aのこと……」声が掠れる。緊張からだ。「Aのこと、ずっと見下してた。僕より、その、出来が悪いし……」
「知ってる」
彼女は快活に笑った。そんな姿を見るのは初めてだった。目を上げて彼女の方を見ると、長い前髪は綺麗にまとめあげられていて、邪魔にならないように変わっていた。
「それで、見下して、僕の方がすごいんだって──」
「自尊心を磨いていた。監督生バッジを磨くみたいに?」
「そ、そう……」
「あのね、そんなことはずっと前から気付いてたんだよ。その上で私はパースのことが
その言葉が、鐘を打つみたいに頭に響く。好きだった、と。それは言葉の綾とかそういう類ではなく、単なる、文字通りの過去形だ。思わずその言葉で手を離そうとする。
「違うよパース、嫌いとかじゃないんだよ」
「でも、『だった』って──」
「だってパースは私のこと好きじゃないでしょ? 好きじゃないのに隣にいて、ずっと宙ぶらりんの状態だった。それが嫌で私、卒業して外国に行ったの。パリはとっても良い街よ。少なくとも、フランス人は熱烈だしね」
──好きだったのは、あの頃のAと、今のAだ。なんて、言えるわけもないし。隣で曖昧に、空白を誤魔化すように笑うAの姿が目の端に映った。今伝えなければ、本当に大丈夫じゃなくなる。
だから──
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こういう名前の付けられない感情が大好きなんすよね…………
あとリクエストも待ってます………
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狸ノ木(プロフ) - そると。さん» コメントありがとうございます! 私も結構気に入っている話なのでそう言っていただきとっても嬉しいです……! たぶんころっと落ちちゃいますね☺️(そんな機会があればですが!) (2022年4月5日 17時) (レス) @page37 id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
そると。(プロフ) - 最後のジニーのお話...めっちゃ好きです...あんな言われたら落ちるしかなくない...??? (2022年4月5日 1時) (レス) @page36 id: 49e4342c2d (このIDを非表示/違反報告)
狸ノ木(プロフ) - 弁当にトマト入れないでさん» コメントありがとうございます〜!!こんなに素敵な言葉を頂いてもいいんでしょうか……すごく励みになります😭してみたされてみた、また書きたいので出すと思います! 楽しみにしてて下さい💞 (2022年2月15日 7時) (レス) id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマト入れないで - してみたされてみたまた出して欲しいです!無理だったらすいません!!お話作るの天才すぎ!!めっちゃいいお話だらけ! (2022年2月14日 22時) (レス) id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマトを入れないで - 私もパーシーと、オリバー大好きだから主さんのお話大好きです! (2022年2月14日 22時) (レス) @page16 id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
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