牙の深さは愛の深さ / George ページ34
自分のものは自分で調達する。そう言われたのはいつだっけ? でも、とにかく、自分の足で街に、向かわなきゃ。
頭の上の方がまっしろで、現実と非現実の境目が曖昧になる。考えることも、できなくて──はやく、やすみたい──だけど──。
足元から自分がぜんぶ崩れ落ちていくような、そんな感覚がした。
__
街中へ自ら繰り出して狩りをする相棒とは違って、俺はそんなに頻繁には行かない。毎日血を飲まなきゃいけないわけじゃないし、不必要に血は流したくない。そんなことを思いながら暇潰しに空を飛んでいたら、森の近くで倒れている人影を見つけた。近寄ってみてみると、そいつの肌は俺ら顔負けの青白さで、骸骨のように痩せ細り、生きていることが不思議なくらいだった。こいつの血は不味そうだなぁ、そう思いつつもなぜか惹かれて、洋館に持って帰ってしまった。部屋のベッドに寝かせてみるが、起きる気配はない。
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「ん……あれ、どこ、ここ」
上等そうなシーツ。頭上で眩く光るシャンデリアはキラキラのお星様みたい。なんとなく親近感の湧くような匂い。ふと窓際に目をやると、誰かそこに座っていた。
「──どなたですか」
「あ? 起きたか。だいじょーぶ大丈夫、俺は吸血鬼だけど取って食ったりしないから」
そうなんですか、と震える唇で答えることしか出来なかった。額に置かれた氷のう、二重にかけられた毛布、剥かれたりんご。ぜんぶこの人がやってくれたんだろうか。剥かれたりんごは、うさぎというよりかは左右耳の大きさが違う犬みたいだった。
「吸血鬼さん、ここってどこなんですか?」
「吸血鬼の館みたいなもん。俺以外にもうじゃうじゃいるぜ、同族」
私を怯えさせようとしているのだろうか。でも、吸血鬼に食べられて死ぬのも、病気で死ぬのもきっと同じこと。怖くない、怖くない。
「あの、食べてもいいんですよ。私のこと」
「食べる気なんかない。ゆっくり血を吸うだけだ。だけど、仲間に見つかっちゃすぐに食べられちまう」
この人はこんなに優しいけど、仲間はどうなのだろう。私の事なんかすぐ食べちゃうのかな。開いた口から垣間見える、剣先よりも鋭い牙で。
「だから、君のことを──隠す!」
それがなにかのサプライズみたいに声を弾ませて彼は言う。
その時、階下から音が聞こえた。重々しい扉が、荘厳な音を立てて閉まる音。二度と開くつもりがない音。
いつかはつま先に / Ginny→←Shhh…… / Fred
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狸ノ木(プロフ) - そると。さん» コメントありがとうございます! 私も結構気に入っている話なのでそう言っていただきとっても嬉しいです……! たぶんころっと落ちちゃいますね☺️(そんな機会があればですが!) (2022年4月5日 17時) (レス) @page37 id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
そると。(プロフ) - 最後のジニーのお話...めっちゃ好きです...あんな言われたら落ちるしかなくない...??? (2022年4月5日 1時) (レス) @page36 id: 49e4342c2d (このIDを非表示/違反報告)
狸ノ木(プロフ) - 弁当にトマト入れないでさん» コメントありがとうございます〜!!こんなに素敵な言葉を頂いてもいいんでしょうか……すごく励みになります😭してみたされてみた、また書きたいので出すと思います! 楽しみにしてて下さい💞 (2022年2月15日 7時) (レス) id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマト入れないで - してみたされてみたまた出して欲しいです!無理だったらすいません!!お話作るの天才すぎ!!めっちゃいいお話だらけ! (2022年2月14日 22時) (レス) id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマトを入れないで - 私もパーシーと、オリバー大好きだから主さんのお話大好きです! (2022年2月14日 22時) (レス) @page16 id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
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