あっかんべー、だ / Percy ページ32
「……指摘するのも馬鹿らしくなってきた」
「じゃあ、お暇させてもらって──」
「スカートの丈、明らかな染髪、過度なネイル、それからメイク! それから、先生曰く君が近くのCDショップでアルバイトしているのを見かけたそうだ。君は生徒手帳の校則一覧を一度でも見たことがあるのか? どうしたら一度に、そして頻繁にこんなに校則を破ることが出来るのか僕には理解出来ない」
「風紀委員」と書かれた腕章を右腕につけたパーシーが仁王立ちして、私を睨んでいる。よくもそんなにまあ長々とつまらない話をできるなぁなんて思いながら、彼の後ろの空間をぼーっと見つめる。空き教室に二人きりだってのに何にも起こる気配ナシ。
「高速が彼女の堅物クンがよー」
昨夜自分で染めたピンク髪をくるくる人差し指で弄りながら、ぼそっと呟いた。というか、口からポロッと出てしまった。
「あ、やっばい」
「風紀委員」の紋章をするりと盗み、そのまま教室を出る。廊下をひた走ると、休み時間中の生徒が私とパーシーと追っかけっこを持て囃した。「おー」「またやってるじゃん」「頑張れー」そんな声を背中に受けながら、軽く走る。パーシーに追いつかれない程度の走りはぜんぜん苦にならない。だってあいつ生粋の文化部なんだもん。
気づけば階段を駆け上がり、屋上に出ていた。
「おく……じょうは……生徒、立ち入り、禁止……!」
後ろでパーシーが肩で息をしながら途切れ途切れに呟いた。 私はそんな彼に近付き、ずれた角縁メガネを直してやる。それから「風紀委員」の腕章を返してあげた。
「だって開いてたんだもん。それに、休み時間中は勝手に入ってもOKなんだよ? 原則はね」
「……あ、確かそうだった……ような……」
「あのね、パーシー」
なんだか正面から言うのが恥ずかしくなって、まあそんなことはないんだけど、なんだか気分で、彼の背を向ける。屋上のフェンスは私よりも高く、どこまでも若草色だ。校庭の生徒は豆粒みたい。
「私、生徒手帳の校則一覧のとこ、ぜんぶ暗記してるんだよ。暗記してるから、破れるんだよ。それに、あなたが風紀委員になるまで、私こんな悪い子じゃなかったよ。五月の初め、1cmしか短くなかったスカートの丈をあなたに注意されなかったら、私こんなことにはならなかった」
言葉を続ける。春の訪れを感じさせる風が心地よかった。
「責任、取ってよねー」
顔は、見れなかった。
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狸ノ木(プロフ) - そると。さん» コメントありがとうございます! 私も結構気に入っている話なのでそう言っていただきとっても嬉しいです……! たぶんころっと落ちちゃいますね☺️(そんな機会があればですが!) (2022年4月5日 17時) (レス) @page37 id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
そると。(プロフ) - 最後のジニーのお話...めっちゃ好きです...あんな言われたら落ちるしかなくない...??? (2022年4月5日 1時) (レス) @page36 id: 49e4342c2d (このIDを非表示/違反報告)
狸ノ木(プロフ) - 弁当にトマト入れないでさん» コメントありがとうございます〜!!こんなに素敵な言葉を頂いてもいいんでしょうか……すごく励みになります😭してみたされてみた、また書きたいので出すと思います! 楽しみにしてて下さい💞 (2022年2月15日 7時) (レス) id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマト入れないで - してみたされてみたまた出して欲しいです!無理だったらすいません!!お話作るの天才すぎ!!めっちゃいいお話だらけ! (2022年2月14日 22時) (レス) id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマトを入れないで - 私もパーシーと、オリバー大好きだから主さんのお話大好きです! (2022年2月14日 22時) (レス) @page16 id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
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