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髪を拭く手が一瞬止まる。
「写真。伏せられてる理由、何となく分かるでしょ?」
「……昔の写真か」
「そう。写真って残酷だよね」自分の言葉を繕うみたいに、また拭く手を動かし出す。それはさっきより過剰になる。「そこにあった現実を、そのまま持ってくる。もうないことも」
空間を沈黙が支配する。窒息しそうなほどの沈黙に耐えかねて、私は自分から口を開いた。
「 じゃあ、帰ろうか。アンジェリーナもフレッドも、みんな待ってる」
フレッド二世のつもりで声に出したのだけど、言葉に乗せてみるとそれは私たちのよく知っているフレッドのことを指しているように聞こえた。ジョージも同じことを感じたのか、目を伏せる。誕生日会までには元気になってもらわないと。そう私は励ますつもりで、言葉を続けた。
「フレッド二世にもそろそろ慣れなきゃいけないんだよ。彼といる時間は、私たちがフレッドといた時間を簡単に追い越してしまうから」
「俺も、フレッドが生きてた時間を追い越した」
何かものをぶつけるみたいな声色。
「──っ、うん。そうだよ。これからも、追い越していかなきゃいけないんだよ。ずっと、ずーっと、みんなで。もう誰も置いていかないように、置いていかれないように」
ジョージがどこかに消えてしまいそうで、床に置かれたその冷たい手をぎゅっと握りしめた。
「──じゃなきゃ、許さないんだから」
____
フレッド、ジョージ、誕生日おめでとう!!!
二人が同じ場所で誕生日を迎えられないことが未だに信じられません。でも心はちゃんと同じところにいてくれたらいいなって……
今回のお話は「時間」をテーマに書きました。あくまで希望や未来に繋げる話なので、シリアスだとは思ってません!
次ページはエイプリルフールの話なのですが、過度な捏造とパロ要素を含むので苦手な方はお気を付けて。
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狸ノ木(プロフ) - そると。さん» コメントありがとうございます! 私も結構気に入っている話なのでそう言っていただきとっても嬉しいです……! たぶんころっと落ちちゃいますね☺️(そんな機会があればですが!) (2022年4月5日 17時) (レス) @page37 id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
そると。(プロフ) - 最後のジニーのお話...めっちゃ好きです...あんな言われたら落ちるしかなくない...??? (2022年4月5日 1時) (レス) @page36 id: 49e4342c2d (このIDを非表示/違反報告)
狸ノ木(プロフ) - 弁当にトマト入れないでさん» コメントありがとうございます〜!!こんなに素敵な言葉を頂いてもいいんでしょうか……すごく励みになります😭してみたされてみた、また書きたいので出すと思います! 楽しみにしてて下さい💞 (2022年2月15日 7時) (レス) id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマト入れないで - してみたされてみたまた出して欲しいです!無理だったらすいません!!お話作るの天才すぎ!!めっちゃいいお話だらけ! (2022年2月14日 22時) (レス) id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマトを入れないで - 私もパーシーと、オリバー大好きだから主さんのお話大好きです! (2022年2月14日 22時) (レス) @page16 id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
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