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二人分の赤毛をわしゃわしゃタオルで拭いて、水分を飛ばす。拭いているうちに二人ともなんだか瞼が今にも落ちそうで、そういえば昨夜遅くまで談話室に残っていたことを思い出した。それに朝から昼にかけての大騒ぎっぷり。馬鹿馬鹿しいことにこんなに真剣になれるのなんて、フレッドとジョージくらいだろう。そんなことを思いながら、「終わったよ」と声をかける。
すっかり二人は寝こけていて、聞こえていないみたいだった。お互いに肩を預けあって眠る姿は、この空間は、多分神様にだって邪魔出来ないように思えた。来年の誕生日には何が起こるだろうか。再来年は、またその次の年は、そして未来はいったいどんな誕生日に────
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私はエイプリルフールが嫌いだ。同時に、四月一日は私の大事な大事な友人の誕生日でもある。くだらない嘘を言い合っては何それと笑い合う日々はもう、窓の向こう側にいってしまった。全てを嘘だと笑い飛ばせたならどんなに良いだろう。
──フレッドがこれからも20歳のままであること、ジョージとアンジェリーナの子供、フレッド二世は着実に生前のフレッドに似てきていること。そして、未だに私たちは心根では完全には立ち直れていないこと。
それでも私たちは明るく振舞って生活をする。だから今日は、ジョージの誕生日を祝うために朝からケーキやら飾り付けやらを手伝っている。
「あれ、ジョージはまだ起きてこないの?」
杖を頭上に翳して、屋根から飾りを垂らしているアンジェリーナにそう訊ねた。
「深夜まで起きてたからねー……寝坊じゃない? まぁ、誕生日だから寝かせてやってもいいけど、せっかくAが来てくれてるんだからなぁ」
「ジョージは誕生日前日、遅くまで起きがちだよね。私見に行ってくるね」
廊下を歩いて、ジョージの部屋の扉をノックする。ここはかつて、フレッドとジョージ、二人の部屋だった。ここを訪れるのもずいぶん久しぶりかもしれない。唾を呑んでから、ノックする。「起きてる?」返事はない。二回、三回。思い切って開けてみると、そこにジョージはいなかった。蹴飛ばされたこん席が残っているベッドシーツと、半分開け放たれた窓。窓から入ってくる雨は無慈悲にも床を濡らしている。
「……ジョージ?」
窓を閉める。かたん、という無機質な音。温度のない音は、私の心臓の輪郭に冷たく触れた。どこに行ってしまったんだろう。こんな雨の中。
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狸ノ木(プロフ) - そると。さん» コメントありがとうございます! 私も結構気に入っている話なのでそう言っていただきとっても嬉しいです……! たぶんころっと落ちちゃいますね☺️(そんな機会があればですが!) (2022年4月5日 17時) (レス) @page37 id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
そると。(プロフ) - 最後のジニーのお話...めっちゃ好きです...あんな言われたら落ちるしかなくない...??? (2022年4月5日 1時) (レス) @page36 id: 49e4342c2d (このIDを非表示/違反報告)
狸ノ木(プロフ) - 弁当にトマト入れないでさん» コメントありがとうございます〜!!こんなに素敵な言葉を頂いてもいいんでしょうか……すごく励みになります😭してみたされてみた、また書きたいので出すと思います! 楽しみにしてて下さい💞 (2022年2月15日 7時) (レス) id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマト入れないで - してみたされてみたまた出して欲しいです!無理だったらすいません!!お話作るの天才すぎ!!めっちゃいいお話だらけ! (2022年2月14日 22時) (レス) id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマトを入れないで - 私もパーシーと、オリバー大好きだから主さんのお話大好きです! (2022年2月14日 22時) (レス) @page16 id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
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