【HP夢】進むような。 【ウィーズリー家】

時間は進む / Fred＆George ページ26

今日も、談話室の中心で注目を集めているのはあの双子だ。フレッドが「静粛に」と本人に最も似合わないであろう言葉を放つ。先程まで喧騒に満ちていた談話室が一旦静まり返る。

「「3、2、1──スタート！」」

　双子の一糸乱れぬ掛け声を合図に、また談話室中が沸いた。浮遊術で宙に浮かせ、相手の顔目がけてパイを投げつける。あっという間に二人の顔はクリームだらけで、顔中に髭が生え、白髪になったようにすら見える。私はそんな様子をみんなと見ながら、「いけー」なんて歓声を送っていた。

　そんな風に盛り上がっているところへと、いつもの判然たる声が聞こえてきた。人の塊をかき分けて、憤然とした様子だ。監督生バッジが窓から射す、祝福の陽光できらりと眩さを放った。フレッドとジョージが、楽しげに目を合わせた。同じ色が浮かんでいる。

「食べ物で遊ぶな──」

　そう言いかけたパーシーの顔に、二人してパイをぶつけた。談話室が割れんばかりに盛り上がる。


＿＿


「……で、後片付けは誰がやるの」

　大体の生徒が散会していく中で、私は二人にそう言った。楽しかったのは事実だけど、談話室は鼻が曲がるほどの甘い匂いとクリームに包まれていて、先生にバレたら罰則一ヶ月では済まなそうだ。未だにクリームだらけの二人は声を揃えて、

「「シャワー浴びてくるよ」」

　と逃げ出してしまった。私は仁王立ちをやめて、あちこちにスコージファイで掃除し始めた。「絶対手伝わせてやる」と呟きながら、私は肖像画についた生クリームを拭って舐めた。
　しばらく掃除をした後、双子の声が背中に届いた。二人して、濡れた前髪が額に張り付いていて、それはまるで水生植物の根っこみたいだった。別のシャツとズボンに着替えている。私は杖をしまいながら、「早く頭拭いてきたら」と笑う。

「僕たちは今日誕生日だ」
「A、この意味が分かるかい？」

　相棒の方を指さし頷きながら、フレッドが言い放った。どうせまたくだらなく、そして楽しいことだろうなと思いながら「分かんない。何？」と。

「「僕たちの命令には従うこと」」

　上から目線なのに、額に張り付いた前髪や、濡れてぺったんこな髪のせいでやけに滑稽に見える。私は笑いを抑えきれなかった。

「手始めに僕たちの頭を拭くこと！」

　ジョージにタオルを渡され、そのまま男子寮に手を引かれて連れていかれる。一段飛ばしに階段を上がる疾走感。

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