262 / Ginny ページ22
読みにくいかもです
＿＿
甘くてあったかくて、舌の上でとろけるような三時のおやつのホットケーキ。額の汗と競うような木登り。寝転がった時に広がる、馨しい草の香り。そういう、幼少期の絵本みたいな思い出がいつも夢での蘇る。同時に、隣にはいつもまだあどけない顔のジニーがいる。それだけじゃない。ホグワーツに入学してからの思い出も、卒業してからの思い出も、散々リフレインする。
今日はいつもより鮮烈な夢を見た。起きた時、喉がカラカラになっている。冷たい水で喉を潤して、気分を落ち着ける。起きるにはずいぶん早い時間──空の奥にはまだ夜の残滓があり、朝とは言えない。コーヒーを淹れて、トーストを焼く。ハムとレタスの簡単なサラダ。トーストにはマーマレードを塗って、おしまい。美味しくも不味くもない食事。モリーさんが作ってくれた朝ごはんはこれよりももっと美味しくて、ホグワーツの朝食だってたしかに簡単なものだったけど美味しかった。懐かしくて、朝食を採る手が止まる。どく、どく、と心臓の音が克明に聞こえるのは、隣に誰もいない証拠。
「……私、なんで、こんな……」
自らの生活がみすぼらしく感じられた。忘れようと努めても、脳裏にはたくさんの思い出が蘇ってくる。例えば──
初めてホグズミードに行った日。あの日のことは忘れられない。体の芯まで暖まるバタービールを一杯飲んで、ハニーデュークスのお菓子を二人で食べて。帰った時にはすっかり体がくたくたでお腹もいっぱいなはずなのに、二人ともちゃんと夜ご飯を食べちゃった。
「楽しかったわ、今日」
「次のホグズミード行きが楽しみだなぁ」
二人で同じベッドに入って、毛布にくるまる。暗闇の中で相手の顔ははっきりとは見えないけど、顔全体に笑顔が浮かんでいることは何となくわかる。
「見てて、」と言ってから毛布の中に潜って、芋虫みたいにもぞもぞ動いてみせるジニーに、私は大笑いしてしまった。
「シー、静かに……」
二人してクスクス笑い合う。そんな幸福にしか満ちていなくて、確かに些細だけど、私の人生に確実に刻まれている記憶。
ジニーは、あの日のことを覚えてくれているのだろうか。それとも私だけ──いや、そんなことはないよね。私たち、親友だから。そんなことを、何度何度も学生時代に思った。結局、卒業しても本人に訊ねることは出来なかった。答えを聞くのが怖かったから。
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狸ノ木(プロフ) - そると。さん» コメントありがとうございます！ 私も結構気に入っている話なのでそう言っていただきとっても嬉しいです……！ たぶんころっと落ちちゃいますね☺️(そんな機会があればですが！) (2022年4月5日 17時) (
レス) @page37 id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
そると。(プロフ) - 最後のジニーのお話...めっちゃ好きです...あんな言われたら落ちるしかなくない...？？？ (2022年4月5日 1時) (レス) @page36 id: 49e4342c2d (このIDを非表示/違反報告)
狸ノ木(プロフ) - 弁当にトマト入れないでさん» コメントありがとうございます〜！！こんなに素敵な言葉を頂いてもいいんでしょうか……すごく励みになります😭してみたされてみた、また書きたいので出すと思います！ 楽しみにしてて下さい💞 (2022年2月15日 7時) (レス) id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマト入れないで - してみたされてみたまた出して欲しいです！無理だったらすいません!!お話作るの天才すぎ!!めっちゃいいお話だらけ! (2022年2月14日 22時) (レス) id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマトを入れないで - 私もパーシーと、オリバー大好きだから主さんのお話大好きです！ (2022年2月14日 22時) (レス) @page16 id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
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