I'll be with you forever . / Ginny ページ15
「それじゃあ、」
ジニーの声が耳元でする。わざと息を吹きかけているのか、くすぐったい。口をすぼめて反抗の意思を示すも、ジニーはくすくす笑うだけ。きゅっと上がった口角には、人を惑わす何かがある。
「明日いちにち、手を繋いだり、ハグしたり……キスしたり。そういうのが、他の人にバレなかったら夜にご褒美をあげる。ねぇ、どう?」
わずかな沈黙。内容を頭の中で繰り返してから、私は遠慮がちに首を縦に振った。
__
授業と授業の間、休憩時間。次の「呪文学」の教室まで来たけれど、どうやら五年生の授業が長引いているようで、私たちは少し待たされることになった。時間を潰している女の子の話題は、もっぱらバレンタイン。大変そうだなーと横目で見ていると、突然頬に温かい感触が。
「ちょっと、ジニー……! バレないように、って言ってたのに!」
声を落として私はそう言った。でもジニーは悪びれる様子もなく、悪戯っぽく笑うだけ。「ねぇ、もう一回」「みんないるんだよ」「でもみんな、ほかのことに夢中よ」そんな攻防戦の末、私は少し妥協して、手を繋ぐことにした。
__
そんなことが一日の間に五回も六回もあって、いつもより大変な一日だった。体に溜まった疲れのようなものをため息として発して、ベッドになだれ込む。後から部屋に入ってきたジニーが、タンスをごそごそやり始める。
「まだみんな談話室にいる間に済ませておこうと思って」
私は少し顔を上げて、ジニーが何を取り出したのか見ようとする。どうやらそれは、正方形の箱のようなもの。そういえば昨日、朝のふくろう便でジニーにこんな荷物が届いていたような気がする。
「ママが昨日の朝、誰かと分け合って食べてって贈ってきたの。フレッドやジョージはチョコをたくさん貰っていたみたいだったから、あなたと食べることにしたわ」
ジニーが蓋を開けると、小ぶりなチョコケーキが現れた。見るからに美味しそうで、さっき晩ご飯を食べたのに、もうお腹が減ってきた。
「目、瞑って」
私は素直に目を瞑る。悪い予感から目を背けながら。
──ああ、やっぱり。嬉しさを隠して、ついつい上がりそうな口角を抑えて、私はいつも通り言う。
「もう、ジニーったら!」
そういえば、この長い一日で唇にキスしてきたのはさっきのキスが初めてだったような。彼女なりに遠慮していたとしたら、愛しさが止まらない。
「君にしか言えないことがある」 / all→←You always make me happy . / George
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狸ノ木(プロフ) - そると。さん» コメントありがとうございます! 私も結構気に入っている話なのでそう言っていただきとっても嬉しいです……! たぶんころっと落ちちゃいますね☺️(そんな機会があればですが!) (2022年4月5日 17時) (レス) @page37 id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
そると。(プロフ) - 最後のジニーのお話...めっちゃ好きです...あんな言われたら落ちるしかなくない...??? (2022年4月5日 1時) (レス) @page36 id: 49e4342c2d (このIDを非表示/違反報告)
狸ノ木(プロフ) - 弁当にトマト入れないでさん» コメントありがとうございます〜!!こんなに素敵な言葉を頂いてもいいんでしょうか……すごく励みになります😭してみたされてみた、また書きたいので出すと思います! 楽しみにしてて下さい💞 (2022年2月15日 7時) (レス) id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマト入れないで - してみたされてみたまた出して欲しいです!無理だったらすいません!!お話作るの天才すぎ!!めっちゃいいお話だらけ! (2022年2月14日 22時) (レス) id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマトを入れないで - 私もパーシーと、オリバー大好きだから主さんのお話大好きです! (2022年2月14日 22時) (レス) @page16 id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
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