I'm addicted to you ! / Fred ページ13
誰の手にも渡らないチョコレートは、私が数日前から色々考えて、作ったものだ。彼は人気者だから、私みたいな箸にも棒にもかからない女からチョコを貰ったところで靡いてくれないだろうけど。
談話室の喧騒から出来るだけ離れるように、半ば不貞腐れながら女子寮へ向かう階段の近くの窓辺に座り込む。
そうだ、こんなもの捨ててしまおう。窓を開け、そこから吹いてくる風の冷たさにひとしきり考える。自分で自分のチョコを食べるなんてことは考えなかった。だってこれは彼だけの、彼のことだけを考えたチョコレート。味付けは私好みじゃないし、そもそもチョコレートは嫌いだ。
もっと湖をよく見ようと、さらに身を乗り出して──
「おい、何やってるんだよ!」
ぐいと腕を引かれる。その力は強く、明らかに相手が男子であるとわかった。私は目を白黒させながら、状況を理解しようとする。
「あぁ、えーっと……フレッドくん、だよね?」
同じ学年で同じ寮だけど、あまり喋ったことはない。フレッドくんも、言うなれば彼と同じ人気者の部類の人間のひとりだ。「彼」はグリフィンドールじゃないけど。
「窓から飛び降りるんじゃないかってヒヤヒヤしたぜ」
「うーん、気分的にはどちらかというと、天文台の塔から飛び降りたい気分かな……」
「何があったんだ?」
「別にっ、フレッドくんに言うような事じゃないし」
私は右手で握りしめたチョコを、彼から見えない位置に隠そうとする。しかし、彼は目敏くそれを見つけてしまった。私の手から軽やかにチョコを奪い、なるほど、というような顔をした。
「好きな人にチョコを渡せなかった、違うか?」
ここまで来て否定したら、自らの惨めさを加速するだけだ。私は勇敢に頷き、「投げ捨てようと思ってたの」と。
彼は少しばかり考えるような仕草を見せてから、また口を開く。
「じゃあさ、俺が貰っていいかな。どうせ捨てるくらいなら、誰かの腹の足しになった方がいいだろ?」
別に、もうなんだって良かった。「彼」以外の人間は、等しく同じに見えたから。
__
Aから貰った、というよりかは、奪い取ったようなチョコをひと口食べる。口に広がるのは、ビターな味わい。全く好みじゃないのに、彼女が作ったチョコならと食べ進めてしまう。他に貰ったものはいくらでもあるのに、俺のために作られたものではないそれだけが愛しかった。一体、誰な渡すつもりだったんだ。
You always make me happy . / George→←You are everything to me . / Percy
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狸ノ木(プロフ) - そると。さん» コメントありがとうございます! 私も結構気に入っている話なのでそう言っていただきとっても嬉しいです……! たぶんころっと落ちちゃいますね☺️(そんな機会があればですが!) (2022年4月5日 17時) (レス) @page37 id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
そると。(プロフ) - 最後のジニーのお話...めっちゃ好きです...あんな言われたら落ちるしかなくない...??? (2022年4月5日 1時) (レス) @page36 id: 49e4342c2d (このIDを非表示/違反報告)
狸ノ木(プロフ) - 弁当にトマト入れないでさん» コメントありがとうございます〜!!こんなに素敵な言葉を頂いてもいいんでしょうか……すごく励みになります😭してみたされてみた、また書きたいので出すと思います! 楽しみにしてて下さい💞 (2022年2月15日 7時) (レス) id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマト入れないで - してみたされてみたまた出して欲しいです!無理だったらすいません!!お話作るの天才すぎ!!めっちゃいいお話だらけ! (2022年2月14日 22時) (レス) id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマトを入れないで - 私もパーシーと、オリバー大好きだから主さんのお話大好きです! (2022年2月14日 22時) (レス) @page16 id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
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