You are the reason why I am here . / Charlie ページ11
バレンタインなんてくだらない、大広間のざわめきをよそに、私は一人でパンを齧っていた。大勢の元に降ってくるふくろう。あちこちで上がる黄色い声。「永久粘着呪文」でもかけられたみたいに隣で愛を囁きあうカップル。くだらない、くだらない、全部くだらない。
「A! A、あの、これ、何だと思う?」
聞き慣れた声がして、私は伏せていた視線を上げた。チャーリーだ。なにか恐ろしいものでも見てきたみたいな顔をしている。
「何、どした」
隣に座ったチャーリーの寝癖を櫛で直しながら、無関心さをまとって訊ねた。
「これ──バレンタイン、カード。さっき大広間に入ってきた時にふくろうが突進してきたんだ。僕に、だって……」
彼が差し出してきたカードを見ると、シンプルなカードの上に何度も見た字が連ねて合った。見たくもない。私は急いで顔を背けた。
「何なんだろう」
「何なんだろうも何も。監督生でシーカーなあんたにカードが来たって何もおかしくないでしょ」
「『あなたは私がここにいる理由です』……こんな素敵なこと言ってくれてるのに、匿名なんだよ」
顔を顰めながら、チャーリーは明かりに紙を透かしてみたり、色んな角度から矯めつ眇めつ眺め始めた。私はその横で、朝ご飯を食べ続ける。作業みたいに。早く他のカードが来ればいいのに。
「どこにも書いてない──うわっ、また来た!」
言っている間に、ふくろうがチャーリー目掛けてカードを雨のように降らしてきた。彼は耳を仄かに赤くしながら、それを拾い集めて一枚一枚読み始めた。──へし折ってやりたい。破ってやりたい、燃やしてやりたい。もしくは、その横面を引っぱたいてやりたい。不純な感情が次々鎌首をもたげ始めるが、私はそいつを押さえ込みながら、無を貫き続ける。バレンタイン? そんなの、どうだっていいですけど。そんな風に。
「でも、嬉しいなぁ」
「……何が」
「いや、多分こういうのって比べるちゃいけないんだろうな。でも、僕はこのシンプルなのが一番気に入ってるんだ。あなたは私がここにいる理由──だってさ。素敵だよな」
なら、その筆跡が誰かくらい分かってよ。そう叫びたくなるのを堪えながら、私はすっと席を立った。早くこの地獄から離れたい。部屋でひとりになって、惨めに塞ぎ込みたい。バレンタインって下らない。カードに自分の名前を書けなかったこともくだらない。バレンタインって、本当に──
You are everything to me . / Percy→←Be my Valen…… / Bill
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狸ノ木(プロフ) - そると。さん» コメントありがとうございます! 私も結構気に入っている話なのでそう言っていただきとっても嬉しいです……! たぶんころっと落ちちゃいますね☺️(そんな機会があればですが!) (2022年4月5日 17時) (レス) @page37 id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
そると。(プロフ) - 最後のジニーのお話...めっちゃ好きです...あんな言われたら落ちるしかなくない...??? (2022年4月5日 1時) (レス) @page36 id: 49e4342c2d (このIDを非表示/違反報告)
狸ノ木(プロフ) - 弁当にトマト入れないでさん» コメントありがとうございます〜!!こんなに素敵な言葉を頂いてもいいんでしょうか……すごく励みになります😭してみたされてみた、また書きたいので出すと思います! 楽しみにしてて下さい💞 (2022年2月15日 7時) (レス) id: 7569f5552e (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマト入れないで - してみたされてみたまた出して欲しいです!無理だったらすいません!!お話作るの天才すぎ!!めっちゃいいお話だらけ! (2022年2月14日 22時) (レス) id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
弁当にトマトを入れないで - 私もパーシーと、オリバー大好きだから主さんのお話大好きです! (2022年2月14日 22時) (レス) @page16 id: 2bfe3fce26 (このIDを非表示/違反報告)
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