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北斗くんが肩をふっとおろして笑った。私は嬉しくなって、北斗くんの頬に触れる。そのまま引き寄せるようにキスをした。すごく久しぶりに、私から触れた。
「なんか、久しぶりにキスしてくれたね。」
「うん。触れたいと思ったの。……ううん、本当はずっと触れたかった。
私も、なんだか怖かった。私が足枷になって、北斗くんが自由じゃなくて無理やり一緒にいるなら嫌だと思ったし、あと、ずっと家に籠って私のことをするなんて、北斗くんにとって良くないって。
だから、今回のBBQに送り出したとき、私のことをいらなくなったらどうしようと思うのに、これで楽しいことを思い出して欲しいと思ったの。
……あとね、私から触っても嫌じゃない？」
北斗くんはきょとんという顔をして、そのまま困ったように笑った。
「あのね、好きな子から触られて嫌がる男がいると思う？」
「その先がまだできなくても？」
「いいよ、そんなの。」
北斗くんがそっと私を抱きしめた。なにかを、赦されたような気持ちになった。
今の私が、心や体が貪欲に北斗くんを求めること、それをつまびらかに表現することが何も恥ずかしくないことだとようやく思える。北斗くんがいないと絶望に引き寄せられ、枯渇していくような気がする。
窓から差し込む太陽の光も、ブルーベリーの実の目の冴えるような青藍色も、夜道に浮かぶ月光の柔らかさも、肺を刺すような冬の寒さも、なにもかも、北斗くんがいないと途端に色褪せてつまらないものになってしまう。
「好きよ。」
「俺の方が好きだよ。」
優しいキスで、もう埋まらない場所なんてないのだ。
北斗くんの声が、指先が、視線が私に触れる度、私の芯の部分がダイレクトに震える。これが愛なのだと思う。
たたえるような愛を生きることがどれほど幸福か。小説や映画、絵画で知ったような気がしていた。人の言う幸福がやっとわかったような気がした。
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作者名：睡蓮 | 作成日時：2023年5月30日 1時
