客観的幸福論 (ページ24)

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　車を1時間ほど走らせたあたりで、ジェシーが窓を開けた。潮の匂いが強くなり、もう海に着くんだと実感が湧いた。自然と車内の空気が高揚する。晴れてよかっただの、腹減っただのワイワイと騒ぐのが楽しくて、やっぱりAを連れてきたかったと思った。

「早く水着着ようぜ！」

　真っ先に車を降りたジェシーがはしゃぎながら言った。すると、慎太郎は自分のズボンを引っ張って俺らに見せびらかしてきた。

「俺、もう海パン履いてるから。」
「それ、着替え持ってくんの忘れるやつだろ。」

　高地が笑いながら言う。「そんな小学生みたいな失敗しねぇよ！」と言いながら、慎太郎は自分のカバンの中を漁っていた。底の方に入っていたらしく、探すのに時間がかかり、慎太郎の顔がどんどん不安げになっていって面白かった。

　海からあがったあとのシャワーはコテージで浴びるとして、こういう場所の更衣室が綺麗なイメージがないので、ミニバンをフルフラットにして着替えることにした。流石に全員で一気に着替えるには狭いし、何よりそんな密着するのは気持ち悪いので2人ずつ着替えた。車の周りをずっとウロウロする慎太郎は早く海に行きたそうにしていた。

　あまりにもお腹がすいたので、海の家で腹ごしらえをした。なんてことはない焼きそばやたこ焼き、カレーが美味しかった。テーブルに隙間がないほどご飯を並べたのに、すぐに食べ終わってしまった。俺が焼きそばをすするのを見ていた樹が、掃除機みてぇと笑った。

　食べ終わってすぐ、砂浜に反射する太陽の光から逃げるように海に入った。連日の暑さでぬるかったが、気持ちがいい。慎太郎が海に頭から突っ込んでいき、ジェシーは海藻ですべってすっ転んだ。スマートフォンで動画を撮っていた高地が運良くそれを捉えていて、見返して腹筋がつりそうになるほど笑った。京本は浅瀬で足を浸したり、貝殻を探している。樹はそれを親のようなあたたかい目で見守っている。京本が転ばないように隣にいる、と言っていたが、岩場をフナムシが駆け抜けていったとき2人ともしこたまビビって尻もちをついていた。とにかく楽しかった。

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