今日:6 hit、昨日:8 hit、合計:22,028 hit
小｜中｜大
21 ページ21
.
激しい喉の渇きで目が覚めた。内容はもう既に覚えていないが、薄暗い夢を見て魘されていたらしい。あえぐような呼吸をしていたせいか、喉が張り付くような違和感がある。Aの体温を探そうと足を動かしてから、実家に帰っていることを思い出した。考えるより先に、体が彼女を探していた。Aがいてもいなくても、思考の8割を彼女が占めている。
喉の乾きを無視して、数日前のAと樹の会話を頭に浮かべた。スーパーから帰ったら玄関に樹の靴があり、ぼそぼそと話し声が聞こえてきたからそっとリビングのドアに近づいた。話が途切れたら入ろうという気持ちと、嫉妬心が混ざりあって盗み聞きをしてしまった。「我慢？」と樹が聞いたあと、Aが「そういうことが出来ない」と言っていた。そのことに負い目を感じているようだった。
そりゃもちろん、と思わず呟く。そりゃもちろん、そういうことはしたい。人並み程度のその欲を発散したいという意味ではなく、Aのことが好きだからだ。Aもそれはわかっていると思うから、欲にまみれた男だと思われて心外だという気持ちはわかなかった。自分がAだったら、同じことを考えるだろうとも思う。ただわかって欲しいのはいやいや我慢しているわけじゃないということだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 248人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：睡蓮 | 作成日時：2023年5月30日 1時
