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スマートフォンがブッと短く震える音で目が覚めた。通知の正体は樹くんだった。画面には6:42とはっきりと出ていて、こりゃまた随分早く起こしてくれたな…と恨めしい気持ちになった。ゲームが終わってすぐ連絡を寄越したのだろう。昨日最後に時計を確認したときは3時だったから恐らく4時間も眠れていない。
樹昨日あいつらに言ったし、話進めちゃうけどマジでいいの?
樹あと北斗になんて言うの?
Aありがとう。
Aみんなの予定が合いそうな日を教えてくれる?私がそこに当てて実家に帰るから。
A私が実家に帰る予定を伝えた後に、皆でやるから行こうよって話をしたら素直に来てくれると思うよ。
樹わり、起こした?返信早くてビビった
樹りょーかい。なら来週か再来週の土日にするわ
樹土日ならAちゃんのお母さんたちもいるからいいべ?
Aそれは大丈夫。気にしないで!
Aわかった。お気遣いありがとう笑
返信を終え、ふぅと息をついた。私が樹くんにお願いをしたことを知ったら、北斗くんはきっと怒る。でも、このままの関係を続けていたら良くない終わり方をするのは明白だ。北斗くんのトラウマを払拭するためには、私を1人にしても大丈夫だという実績が必要だと思う。
やけに頭が冴えていて、喉もカラカラに乾いているので温かい紅茶が飲みたくなった。夏の日差しで部屋の中は暑く湿っているというのに。ベッドからそっと出て、壁を伝ってキッチンに向かった。寝起きだというのに体がいつもよりなめらかに動く。上の戸棚を開けて茶葉を取り出すのにも苦労しなかった。
身体が元に戻ろうとしている。それは何よりも喜ばしいことだった。リハビリの効果がしっかり出ているということだし、北斗くんをしがらみから解放できる。罪悪感からくる自己犠牲は何も生まない。
カップを持って歩いてみた。時々壁に触れながらも、寝室までたどり着くことが出来た。サイドテーブルにカップを置き、北斗くんを起こさないようゆっくりとベッドに腰を下ろす。北斗くんが起きたら報告をしなきゃ。隣を見たらしかめっ面をして寝ていた。部屋が蒸し暑いのに加え、カーテンの隙間から差し込む光が眩しいらしい。クーラーの電源を入れ、カーテンをしっかり閉めてやると、だんだん穏やかな顔になっていった。
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作者名:睡蓮 | 作成日時:2023年5月30日 1時