君は綺麗 (ページ5)

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学校の正門をくぐる直前、

普段より小さなAの声が届いた。

これがAじゃなかったら聞き逃しそうなほどに小さい声だった。

「龍斗、」

『どうしたの？』

「薬、龍斗にふれてほしくて、わざとのんでないっていったら、おこる？」

しおらしくなった感じはなんだか、

怒られるのをビクビク待ってる子どもみたいだ。

俺はAに怒ったことなんてないのに。

自分を大事にしない時は例外として。

激怒、なんてことは１度たりともないのに。

『怒んないよ。もっとたくさん、Aの髪に触りたくなるかも。』

「じゃあさ、こわくて、龍斗がいるときにしか、薬のめないっていったら？」

あのときに初めてAの影の部分を見られたと思う。

いつも明るくておっちょこちょいで、

楽観的に振る舞う君が心の奥底にしまい込んでる暗いところ。

『頑張って飲もう？俺はずっと隣にいるから。』

「…ありがとう。
よし、お薬効いてきたから。はやくいかなきゃ。」

弱っている時にしか本音を言ってくれなかった。

それは今もずっと。

あれをきっかけに俺は、

今まで以上に君を大切にしたいと思ったんだ。

俺も然り、周りに見せている君は多分、

本当の君であって本当の君じゃないと気づいたから。

【儚くて綺麗な君の姿】。

あのときに、

俺に背を向けて弱さを必死で隠そうとする君に、

もっと気の利いた言葉を返せなかったかな。

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