第参話 ※ ページ5
｢そのような事があったんです………｣
『え、信じてくれるんですか？』
信じてもらえるかどうか、一か八かだった。
それでも露木は、信頼しきった表情で頷く。
｢信じますよ。まぁ、信じる材料が他にもありましたから｣
そういうと露木は立ち上がり、Aを誘導する。
貴族の華々しい屋敷というよりも、質実剛健を表したかのような屋敷を歩く。
まるで迷路のような廊下を歩くと、とある一室へと促される。
その部屋は物置として使っているのだろうか……元鬼殺隊だからか数多くの刀や書物が所狭しと並べられている。
その中の一つ、かなりの年代物らしき巻物を渡される。
｢その巻物は代々私達、幻天の呼吸を使う剣士達が記録したものです｣
『げ、幻天の呼吸……？』
そのような呼吸、原作には無かったはずだ。
Aは首を傾げながら、その巻物を開く。
案の定、その巻物は複雑怪奇でAが読むには少々難易度が高い。
｢私もよく、師範から見させて貰いましたね｣
『そ、そんな凄いものだったんですね』
｢えぇ、その書は私で三代目です。受け継がれて三百年ほどでしょうか｣
『え、それって……三百年の間を三人が受け継いだ事ですよね？ 年齢的に不自然なのでは……？』
今の時代でも平均寿命は八十年ほど。それよりも昔のこの時代の人が百歳以上も生きられるのだろうか。
『となると、露木さん……貴女は一体何者なんですか？』
｢そうですね、Aさんの過去も伺ったのです。私の過去も話ましょうか｣
Aが訝しむように聞くと、露木は一息おいて口を開く。
｢Aさんは呼吸って知っていますか？ あぁ、私達生き物が常時行う呼吸ではないほうです｣
『えぇ、確か岩・水・風・炎・雷……全集中の呼吸と呼ばれるものですよね』
｢そうです。その数ある呼吸の中でも、私達が使うのは幻天の呼吸と呼ばれるものです。
この呼吸はどの呼吸の派生でもない、唯一無二のもの。それは非常に扱いにくく、伝承しづらい｣
『そのような呼吸が………』
露木曰く、その呼吸は始まりの呼吸である日の呼吸よりも高威力と。しかしながら、それを使用出来る者は限りあるらしい。
｢しかし、この呼吸は使用者に絶大な恩恵をもたらします。それは半不老化と自己治癒能力の向上。治癒能力に至っては、他者へも効果を与える事ができます｣
(なにそれ、チートじゃん)
心の中で半眼でツッコむAを置いて、露木は自身の過去を話していく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わんフル | 作成日時：2022年4月25日 16時
