第弐話 ※ ページ4
「もし、行くあてが無ければ、ここにいませんか?」
『えっ………いいんですか?』
全てを見透かすかのような瞳で、露木はAの瞳を見つめる。
「はい、もちろんです。Aさんの苗字から察するに、この辺りの人ではなさそうですしね」
『ま、まぁ………良く珍しい苗字とは言われますね』
Aは情けそうに苦笑すると、露木も微笑む。
「それに、Aさんには少々興味がありますし……ね?」
『ほ、ほぅ………?』
(いや確かに、ある日いきなり川辺で倒れてたら不思議に思うよね)
何か引っかかる台詞だが、Aは特には気にしなかった。
それに、今はそれ以上に気になる事がある、と。
「? 何か気になる事がありますか?」
『えっと………あのー、そうですね』
モジモジと俯きながら、Aは必死に頭をフル稼働させる。
もしここで、ここは鬼滅の世界ですか? などと言うわけにも行かない。
ならばどうする、鬼っていますか? 否、これだとただの馬鹿の発言だ。
ここは当たり障りのない、自然な質問を考えなくては……
「あ、もしかして藤の花の匂いが気になりますか?」
『藤の花……というと、あの藤の花ですか?』
「ご存知でしたか? そうですね、鬼が苦手とする藤の花です」
『鬼!?てことは鬼殺隊も!?』
鬼が苦手な藤の花が存在するという事は、鬼殺隊も存在するということだろうか?
これで存在していたのならば……ここは間違いなく鬼滅の世界ということで――――
「え、えぇ、私は元鬼殺隊士ですから」
『ッッ!?!?!?』
あまりの嬉しさにAは声にならない歓喜の悲鳴をあげた。
(ハイ確定! ここは鬼滅の世界です! 神様ホントありがとうっ!!)
「う、嬉しそうですね……まさか鬼殺隊の事を知っているとは」
『あっすみません! つい興奮してしまって』
このままでは、ただの頭のイカれた人になってしまう。
Aは一度深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。
『どうやら、落ち着いたようですね。改めて自己紹介をさせてください。私は元鬼殺隊の柱、露木と言います』
「こ、こちらこそ……私は鷹風Aです。露木さん、よろしくお願いします」
(まさか元柱だったなんて……とても若そうだし、何か理由があって辞めたのかな)
「ところでAさん、貴女はどうしてあの場で倒れていたのですか?」
『あ、あーそうですね……えっと……はい』
Aは覚悟を決め、これまでの経緯を口にした。
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作者名:わんフル | 作成日時:2022年4月25日 16時