月と紅、血と奴隷(8-1) ページ18
8話は全てとりっぴぃさん視点になります。
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森の真上にくっきりと浮かぶ丸い月。
それを背後に控えながら、丸くくり抜かれた森の中の草原に佇む、廃れた教会。
ごくりと固唾を飲み込むと、その場所をきっと睨みつけた。
「……ここに、九ちゃんとゴリゴリがいるんだよね?」
「そう……らしいな。外からじゃ分からんが」
緊張した面持ちでぎゅっと拳を固めるこいろちゃんと、油断なく臨戦態勢を取りながら返答するとりなん先生。
先生の手のひらからはぼわぼわと冷気が漂っていて、それを見て俺はあぁ、かっこいいなんて思ってしまう。
九ちゃん。九血鬼。
九ちゃんは俺と愛の戦士……つまり二神の実況動画を見て、ゲーム実況を始めたらしい。
どこかそれを優越的に見ていた。かわいい後輩なんだと思っていた。
けれど、どうなんだろう。異世界にトリップしてからも、俺は戦闘において役立っていない。
単純に言えば、悔しい。
愛ゴリは戦闘に御誂え向きの〈能力〉を持って、最前線で拳を振るってる。
俺は後方でバケゆかに守られて、にどみさんの指示を待つだけ。
「二神」と言いつつも、頼られてるのはやっぱり愛の戦士な気がしてきた。
俺には何ができるんだろう。
こんな自分のまま九ちゃんを正気に戻して、果たして九ちゃんの見たような「俺」でいれるだろうか。
九ちゃんの笑顔が、思い浮かばない。
俺は、何がしたいんだろう。
「まずは教会に乗り込もう。とりっぴぃ、パチンコで窓ガラス割れるけ?」
「……」
「……とりっぴぃ?」
「へっ、あ、うん!!任せて!」
握りしめた拳を開いて、怪訝そうな顔をするにどみさんと敢えて目を合わせないようにしながら、俺はポシェットからパチンコを取り出して、古びた窓ガラスに焦点を絞った。
*
パリーン、といい音がして窓ガラスが割れる。
それを皮切りに一斉に教会内へと突入する。
割れ残った破片を蹴散らすと、中でほっと薄ら笑う愛ゴリと白いボロボロの拘束具のような服に身を包んだ九ちゃん。
そのつまらなさそうな視線を受けながら、ズズくんととりなん先生が同時に一歩を踏み出した。
にどみさんと俺とこいろちゃんとmegaちゃんと愛ゴリを囲むようにバケゆかが〈障壁〉を張る。
ズズくんの飛び蹴りととりなん先生の氷の剣が九ちゃんに迫るが……九ちゃんは難なく両方を細い腕で受け止め、ガッチリと掴んでしまう。
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あんぴーなっつ(プロフ) - かおりのさん» コメントありがとうございます!琵琶ちゃぷの話はかなり気合入れたので、感動していただけて嬉しいです!閲覧ありがとうございました(*´ω`*) (2019年9月15日 22時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
かおりの - めっちゃ面白いです!琵琶ちゃぷの所すごい泣けました!全然ゆっくりでいいので更新頑張って下さい! (2019年9月14日 22時) (レス) id: a7a49677e4 (このIDを非表示/違反報告)
あんぴーなっつ(プロフ) - ネコさん» コメントありがとうございます!楽しく読んでいただけて私も嬉しいです!閲覧ありがとうございました(^ω^) (2019年7月16日 16時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - 毎回ストーリーにドキドキしちゃってます!www更新頑張ってください! (2019年7月15日 21時) (レス) id: ab4778a323 (このIDを非表示/違反報告)
あんぴーなっつ(プロフ) - すぷらさん» わっ!コメントありがとうございます!mzmn界隈で見たことのある方から感想いただけて嬉しいです!これからも頑張ります(*´ω`*) (2019年5月27日 14時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんぴーなっつ x他1人 | 作成日時:2019年3月18日 17時