月と紅、血と奴隷(8-2) ページ19
「なッ!?」
驚愕に見開かれるとりなん先生とズズくんの目。
九ちゃんは相変わらず無表情のまま2人の手首を掴んだまま振り回すと奥の壁に向かって投げ飛ばした。
野球選手みたいな豪速で脆い木の板を突き破っていく2人。
「ズズ!!先生!!」
愛ゴリが心配するように声を荒げる。
教会の外に放り出された2人は、粉塵に巻かれながらもなんとか立ち上がったようだ。
それを見つつ、愛ゴリは九ちゃんからじりじりと距離を取る。
「くそッ……バケゆか!!」
「はいよ!!〈絶縁障壁〉!」
ヘッドホンを付けたにどみさんの鋭い指示に、両手を大きく振りかぶって俺たちを囲む半透明の薄紫色の〈障壁〉を張る。
そして、〈障壁〉の外へ飛び出したこいろちゃん。
「九ちゃん……《や゛め゛てぇええええええええ!!!!!!!!!》」
こいろちゃんが悔しそうに唇を噛むと、すぅと一気に酸素を取り込んで、思い切り〈超音波〉を放つ。
廃れた教会がギシギシと悲鳴をあげ、吹き飛びそうになる。
しかし、教会の何処にも九ちゃんの姿は見えない。
「あえぇぇ!?九ちゃんはッ!?」
「わからへん!!気ィつけや!!」
バケゆかの〈障壁〉の中であわあわと叫ぶmegaちゃんと、油断なく周囲を探るなな湖さん。
しかし、
にゅっと床から伸びた華奢な腕が、俺のベルトを掴んだ。
「へっ」
次の瞬間には、浮遊感。
例えるならジェットコースターで落ちる時のアレが、神経を刺激したと思ったら、まるで流れ星のごとく柱に投げ飛ばされる。
なにが起こったのかわからないままにズルズルと柱を滑り落ちて、ズキズキ、ジクジク、と背中が痛む。
「とりっぴぃ!!……クソッ、〈障壁〉効かねえとか有りかよ……!!」
吐き捨てるように爪を噛みながら呟くにどみさん。
ぐらぐらと揺れる頭の隅で、九ちゃんと応戦するなな湖さんの様子をぼぅっと見ていた。
再びズズくんととりなん先生を加えた戦闘が勃発するのを尻目に、俺はその光景を取り憑かれたように眺めていた。
逸らした視界に、早次に指示を飛ばすにどみさんが、小さな盾状の〈障壁〉を無数に展開するバケゆかが、megaちゃんに掴まるこいろちゃんが、ツルを操るなな湖さんが、攻撃を繰り出し続けるズズくんととりなん先生が、次々と映る。
ただ1人、愛の戦士を除いて戦い続ける彼らを。
先ほどの衝撃でバカになってしまっただろうベルトの金具はあっけなく外れて、必然的にぶら下げていた工具セットも教会の隅に追いやられていた。
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あんぴーなっつ(プロフ) - かおりのさん» コメントありがとうございます!琵琶ちゃぷの話はかなり気合入れたので、感動していただけて嬉しいです!閲覧ありがとうございました(*´ω`*) (2019年9月15日 22時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
かおりの - めっちゃ面白いです!琵琶ちゃぷの所すごい泣けました!全然ゆっくりでいいので更新頑張って下さい! (2019年9月14日 22時) (レス) id: a7a49677e4 (このIDを非表示/違反報告)
あんぴーなっつ(プロフ) - ネコさん» コメントありがとうございます!楽しく読んでいただけて私も嬉しいです!閲覧ありがとうございました(^ω^) (2019年7月16日 16時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - 毎回ストーリーにドキドキしちゃってます!www更新頑張ってください! (2019年7月15日 21時) (レス) id: ab4778a323 (このIDを非表示/違反報告)
あんぴーなっつ(プロフ) - すぷらさん» わっ!コメントありがとうございます!mzmn界隈で見たことのある方から感想いただけて嬉しいです!これからも頑張ります(*´ω`*) (2019年5月27日 14時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんぴーなっつ x他1人 | 作成日時:2019年3月18日 17時