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「驚きましたよ。あなたが、この世界の方だったとは」
「あ……いえ、違うの。……あたしは、気がついたらここにいて……でも、ただの『余所者』よ」

白いそのひと……こちらの世界へ来てしまう前、公園で会った男性は『ホワイト・ラビット』と名乗った。その名の通り、今は髪と同じ白い兎耳が見えている。ホワイトは泣きじゃくるアリスを見ると、穏やかな苦笑を浮かべて頭を撫でた。

「『余所者』だなんて……そんな事、誰に言われたのです? あなたは経緯はどうであれ、この世界にやって来たのでしょう。ここにいる間は、私たちと同じ住人ですよ」
「ホワイトさん……」

ホワイトの声は外見に違わず、柔らかく落ち着いた声音だ。その優しい響きに、ささくれだっていたアリスの心は次第に落ち着いていく。ハッターへ向けた怒りが徐々に鎮まり、次に浮かんだのは後悔と寂しさだ。綯い交ぜになったそれに、アリスは俯いて溜息を吐く。

「……あたし、寂しかったんです、ずっと。学校でも居場所がなくて、家にいても、お姉ちゃんは仕事があるから、いつも1人で。だからここに来て、ハッターに助けてもらって……それに、不思議な力を貰って。あたし、舞い上がってた。勘違いしちゃった。ここには、あたしの居場所があるって……そんなの、有り得ないのに」
「……」
「はは……ホント、どうしたらいいんだろう。ハッターにもあんなこと言って、あたし、行くところなんか無いのに……今までよりもっと、どこにも……居られなくなっちゃったっ」

ホワイトは何も言わず、ただアリスの頭を撫で続けた。幼子をあやすような温もりが懐かしくて、涙が止まらなくなった。

「……アリスさん。提案があります」
「提、案?」
「ええ。……居場所が無いと言うのなら、うちの城へ来ませんか。幸か不幸か、女王陛下のお世話役が1人、足りなくてね。私が兼任しても良いのですが、年の離れた男が務めるよりは、歳の近いあなたが傍にいてくださった方が宜しいでしょう」
「え、ええ!? 女王陛下のお世話役、って……待って、もしかしてホワイトさん、あなた国の偉い人!?」
「ふふ、これでも一応、国家宰相を務めております。僭越ながら、女王陛下と共に国政を行う立場ですね」
「それって、国のトップ2ですよね!? やだ、あたし、そんな偉い人になんて態度を……!」

涙も思わず止まったくらいの驚きだ! アリスは慌てて居住まいを正した。とは言っても、地面に座り込んでいることに変わりはないのだが。

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設定タグ:恋愛 , 異世界 , トリップ   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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ユエル(プロフ) - クルルさん» コメありがとうございます!不定期更新ですが頑張りますね(^^) (2021年1月11日 13時) (レス) id: 673d6f73a6 (このIDを非表示/違反報告)
クルル(プロフ) - めちゃくちゃ面白い!!!!サイコーです!!続き待ってます!! (2021年1月3日 23時) (レス) id: 297c8a2c3d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年5月21日 1時

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