検索窓
今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:9,847 hit

0-1(日向なつ) ページ1

――私立シャトランジ学園高校。
放課後の教室で、白羽アリスはぼんやりと頬杖をついていた。釣り目がちの大きな黒い瞳、化粧は施されていないながらも健康的に淡く色付いた頬。長く伸びたストレートの黒髪に、カチューシャについた青いリボンがアクセントを与えている。

(……暇、だなあ)

彼女のいる2年Bクラスは現在シャトランジ祭……学校祭の準備中だ。ほかのクラスメイトたちは忙しなく手元の衣装を縫っていたり、カフェで提供する菓子の製作中だったりするのだが、自分の分の衣装を縫い上げてしまったアリスは暇を持て余していた。
もともとアウトドア派で部活動でもバスケ部に所属しているアリスだが、姉であるリカの影響もあって手芸は得意だ。黙々と作業に没頭していたせいもあり、ほかの生徒たちより数段早く作業が終わってしまっていた。かと言って、クラス中が作業を進めている中で一人だけ帰るのも感じが悪い。その結果として、アリスは冒頭の通り頬杖をついてだらだらと暇を潰しているのだった。

(こういうとき、転入生って不便ね。今更あたしが出しゃばるわけにもいかないし、バスケ部はお休みだし、暇だし、帰ったらお姉ちゃんにこき使われるし、……暇だし)

この学校へ転入してきたのは夏……数ヶ月前のことだ。すでに社会人であり、たった一人の家族である姉の転勤が理由だった。その時点で学校祭の準備はそれなりに進んでおり、クラスの友人関係も出来上がっていた。今更やってきた転入生(よそもの)であるアリスが少しばかりクラスから浮いてしまうのは当然の流れであると言えるだろう。
いじめられているわけでも、孤立しているわけでもない。ただ、少しだけ、居心地が悪いだけ。幼い頃から女の子とおままごとをするよりは外で男の子と駆け回って成長してきたアリスにとって、その居心地の悪さを埋めるための立ち回りは難しいものだった。

「ねえ、糸もうちょいで足りなくなりそうなんだけど。誰か暇な人、買いに行ってきてくれない?」

一人の女子がそう声を張り上げた。暇な人、アリスはまさしくそれだ。応えるように声を張る。

「あたし、衣装できてるし暇だよー。買ってこようか」
「あ、ホント? じゃあアリスちゃん、頼むわ。明日でいいから立て替えといてくれる?」
「ん、了解。糸どれ?」

言われた通りの色とメーカーをメモ帳に書き留め、アリスは鞄を手に席を立つ。

「じゃああたし、それ買いたいし先に帰ってるね。お疲れ様」
「うん、お疲れ〜」

0-2→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (28 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
8人がお気に入り
設定タグ:恋愛 , 異世界 , トリップ   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ユエル(プロフ) - クルルさん» コメありがとうございます!不定期更新ですが頑張りますね(^^) (2021年1月11日 13時) (レス) id: 673d6f73a6 (このIDを非表示/違反報告)
クルル(プロフ) - めちゃくちゃ面白い!!!!サイコーです!!続き待ってます!! (2021年1月3日 23時) (レス) id: 297c8a2c3d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年5月21日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。