霊柱は胡散臭い 肆【鬼滅の刃】

百五十話 決意 ページ16

壺から出た後のことは上手く覚えていない。

ただ、自分の霊力を最大限につかって目くらましの術を使い屋敷から逃げ出した。


寺を巡って追っ手から逃げていれば、この世には不釣り合いのような清い霊力を持った男性…お館様と出会った。






「俺は裏切り者の太刀川家。そんな奴を鬼殺隊に入れようだなんて…アンタちょっとおかしいんじゃない？」

「うん、そうだね。でも私は分かっているよ。君は誰よりも優しく責任感が強い子だとね。」

「！…兄弟殺した俺への当てつけですか！？そんな同情じみたもん要らねぇ！」

「そうじゃないよ。」





怒りをも簡単に鎮められる。お館様の声は心地が良すぎた



「なら、どうして君はまだ太刀川という姓を名乗っているんだい？」

「！」

「死んだ兄弟との繋がりを無くしたくない。彼らの存在をなかったことにしたくないんだろう？」




そうだよ。唯一の生き残りの俺が太刀川を名乗るのをやめたら存在を消された奴らの生きていた証が無くなる。


なんでこの人は分かるんだよ。

何故かポロポロと涙が溢れた。





「ずっと我慢していたんだね。でも君を縛るものはないよ。もし兄弟への罪滅ぼしがしたいのならば彼らの死の原因の悪鬼を君の手で倒すんだ。」

「鬼……」

「そうだよ。太刀川家が狂った原因、殺し合いの原因、兄弟の死の原因、それは全て鬼から始まっている。」




そうだ。俺が倒せば良い。
人間の“自由”を奪うヤツらを。


もうやなんだ。これ以上、大切な誰かを……目の前で指をくわえて人の死を眺めるのは……

百五十一話 痣出現→←百四十九話 蠱毒

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す