甘えるときは。 (Y.I) 1 ページ12
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『フルセット、か、』
あいにく会場には行けなかったけど、
明日の決勝は絶対行くね、って約束した。
だから絶対決勝行ってね、とも約束した。
3連覇してるからって、甘く見すぎてた。
思わず呟いた、
負けを意味するその言葉は静かな部屋に響く。
プルルルル プルルルル プルルルル
流れた涙が止まるより早く、
祐希からの着信を表す画面が現れる。
そして私は、それを迷わず手に取る。
『っ、もしもし、』
「、恋子?ごめんな、負けちゃった、」
普段なら聞こえる笑い声が聞こえなくて。
でもそんなの当たり前ことで。
その当たり前なことが、
更に現実を知らせている気がしてまた涙が溢れる。
『っ、そんなこと、言わないでよ』
「……、ねぇ恋子、会いに行っていい?」
「会いたい」
祐希がこの感情を表すときは、泣きたいときだ。
ずっと一緒にいたから、一番分かってる。
ずっと一緒にいたから、寄り添ってあげたい。
『うんもちろん』って言うとすぐに電話は切れて、
「すぐ行くね」ってLINEでひとこと。
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体育館からここまでは意外に近いらしく、
電話を切ってから30分ほどでチャイムが鳴った。
部屋に上がり込むと、
祐希は途端に私に寄りかかる。
『…祐希、?』
「…っ、なんのための4年間だったんだよ、」
いつもは弱音を吐かない祐希が、
こんなにも弱々しいことを発し、涙を流した。
その現実をなかなか受け止められなくて、
なにも言葉を掛けてあげられない。
まだ明日の試合は残ってるから、
『お疲れ様』
は、違うと思うし、
『頑張ったね』
なんて言葉も図々しくて言えない。
今1番、頼れる人にならなくちゃいけないのに、
頼れるどころかなにも出来ない自分が悔しい。
『、…祐希が1番、1番輝いてたよ、』
考えに考え抜いて口から出たのがこんな言葉。
頼りない自分が本当に悔しくて。
でも今、悔しいのは私じゃなくて祐希だから。
それが祐希のためになるなら、
ただそばにいるだけでもいいなら、
ずっとずっと抱きしめてあげたい。
「…、明日頑張るから、見ててな?」
『当たり前だよ、』
2人で流した涙を忘れずに、
祐希は一歩ずつ前に進んでいく。
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恋子(プロフ) - はらさん» 以後注意致します。 (2018年6月8日 17時) (レス) id: de688bc33f (このIDを非表示/違反報告)
はら - 前回も注意されておきながらまた外し忘れでしょうか?違反行為をしているという自覚が足りないのではありませんか?次は違反報告します (2018年6月8日 17時) (レス) id: 6e98ea36ff (このIDを非表示/違反報告)
はら - オリジナルフラグをちゃんと外して下さい違反行為です。ルールをちゃんと理解の上作品を作って下さい (2018年6月8日 17時) (レス) id: 6e98ea36ff (このIDを非表示/違反報告)
恋子(プロフ) - あーさん» コメントありがとうございます!頑張ります! (2017年11月4日 19時) (レス) id: de688bc33f (このIDを非表示/違反報告)
あー - 頑張れ! (2017年11月3日 12時) (レス) id: 147e621a16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:恋子 | 作成日時:2017年10月29日 17時