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「A、とりあえず水を」
差し出されたコップを掴むが、力が入らず危うく落としかける。
『チッ…』
「ディルック…Aって酔ったらいつもこうなの？」
「嗚呼」
『もうやだ…』
不貞腐れたかのように机に突っ伏す。
どうやらいつもよりも幼くなっているようで。
「おいA、そんなとこで寝てると俺が持ち帰るぞ」
『ジンさん呼ぶもん』
肘を立て、頬を膨らませる。
かなり幼く見える。
「Aの幼少期はこんな感じだったのか…」
ディルックがポツリと言う。
「た、確かに…！」
仙人の下で育ったAの幼少期は、璃月の一部の者しか知らない。
もちろん、モンドにいる者たちは知らない。
『璃月に帰りたい…』
「そんなにモンドは嫌か？」
『いや、単なるホームシック』
ウェンティから奪った酒瓶を飲み干す。
「そんな一気に呑んだら…」
ダンッと勢いよく置く。
『そもそも！なんでこんなに西風騎士団は猫探しにまで協力するんですか』
「頼まれたのを断るのもな」
『でもそれのせいでジンさんは体調崩すし一般兵はついには平和ボケっすよ…』
「痛いとこ突いてくるな…」
『モンドが平和なのも良い事ですけど、いつ災いが起こってもモンドを守れるように…』
ガクリとAの頭が傾く。
「…寝たな」
ディルックが軽くため息をつく。
「面白いね、酒は人の本性を暴くっていうけど」
ウェンティがAの長い髪を撫でる。
「いつも人の事を思ってる」
そして毛先を持ち上げ、軽く口づけを落とす。
『ん…』
「久しぶりに見たな、コイツの寝顔」
「えっガイア…」
「誤解だ」
両手を上げて無実を主張する。
「前にコイツが寝不足で倒れた時に俺が運んだんだ。軽かったぞ」
「だろうね、だってこんなに腰細いもん」
「お前たちは何処を見てるんだ…」
ディルックがカウンターから出てくる。
「ほら、今日はもう閉めるから早く出るんだ」
「Aは？」
「ワイナリーまで運ぶ」
「え〜そう言ってAに何か…いだっ」
拳骨を落とす。
「痛そう…」
「君もやってあげようか、ガイア」
「それはちょっと遠慮するぜ旦那」
名残惜しそうに扉を開ける二人。
「あ、ディルック」
ウェンティが声をかける。
「いくら自由の国でも、Aに手を出したら…分かってるよね？」
「僕はしない。まだ」
翌日、ワイナリーで沢山のプレゼントに囲まれたAが発見された。
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作者名：松 | 作成日時：2022年12月24日 14時
