元攘夷志士の医者はイケメン！「いや私女だからァァァア！」

第六訓 ページ9

「――なので、取り敢えず腕を固定しておきますね」

私はそう言い、包帯を土方の腕に巻き付けた。ちょっとキツめに。

「いて、ちょっとキツくないすか？」

「いえ、そのような事はありませんよ。ゆるければ悪化の可能性が高まります」


そう。嘘は言っていない。その高まる可能性は無いに等しいほど低いという事を口にしていないだけだ。

「そっすか」

納得のいかない表情の土方。


「骨がくっ付いた後も、念のため一週間ほど安静にしていて下さいね」

これは真面目に医者として話してやった。頷く土方に、感謝しろよと念を送る。念使えねぇけど。

「悪化したようでしたらまたお越し下さい。改めて診察致しますので」

どうか悪化するように願う私だった。代金も手に入るし気に食わん奴も痛い目に合わせる事ができるんだからな！

(名前から)医者は消え去ったようだ。


「今日はもう診察料をお支払いいただいて終わりです」

「あぁ、どれくらい？」

ふっふっふ。
その問いに、私は無言で金額を示した紙を渡す。


うわ、凄い顔してるな。


げっへっへ、鬼の副長が目を剥いてる姿なんてそうそう見られるもんじゃねぇぜ。

冷静な私に非難の目で見られてる気がするが私は全く気にしなかった。


「高くね？ 法外料金だろ、これ」

「いえいえ、それは通常の骨折の場合です。貴方の場合は剝離骨折等の軽いものとは違い重傷なのです。捻挫などとは比べ物にもなりません。複雑骨折の上といっても過言ではないでしょう……」

適当な事を長々と喋る私。医者だけども実はしっかり勉強して認められてるわけじゃないんだよ。実質闇医者なんだよ。バレてないけど。だから知識そこまでないんだよ。ははっ。

途中で「やっぱ私って悪人かなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！」と、どこかの漫画の四部主人公のような事を考えたりもしたが、これは身を護る為だ。

警察に！法外だと！バレでもしたら一巻の終わりだからな！


『誰が元ネタ解るんだ』なんて冷静な自分の声が聞こえるがそんなもん気にせんッ！


「あ……もう解りました。あとで上に請求しますんで……領収書下さい」

「はいわかりましたー！」

諦めたのか、引き下る土方。

うし勝った！
しかし、左手の小指を切ったりしなくて良かった。

『誰が元ネタ解るんだ』

黙っててくれ、冷静な自分。


＊


明日は祭りだ。
そして私は大金を手に入れた。

このことが何を示すかわかるか？



そう。私は祭りへ行く。

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