和解 ページ44
*
――夢?
目を覚ましてまず最初にAはそう思った。煉瓦造りの壁、幾つも並んだ白いベッドには数人の寮生が寝かされ、先端の尖ったアーチ型の窓からは午後の陽光が差し込んでいる。どうやら保健室のようだが、ここまで来た記憶はなかった。
「思っていたよりもはやい目覚めだな」
その声にAはたちまち飛び起き、椅子に腰掛けた人物を認識する。マレウス・ドラコニア本人がそこにいた。
「サバナクローの人間たちはお前を殺してしまったのではないかと慌てていたぞ」
マレウスは面白そうに笑みを浮かべる。
友人にカメラを預けた後、けじめをつけるために単身でサバナクロー寮生たちのところへ乗り込んだ。そこで殴り合いの喧嘩に発展したのだが、魔法による一斉攻撃を浴びたせいで、数時間は寝込んでいたのだ。
Aの脳裏に、レオナの叫びが蘇る。
『俺は生まれた時から忌み嫌われ、居場所も未来もなく生きてきた。どんなに努力しても、絶対に報われることはない。
その苦痛が、絶望が……
お前らに分かるかぁアアアアアアアッ!!!!』
「お前はよくやった」
Aの心を見透かしたようにマレウスが言う。
「レオナさんは……?」
「あいつなら無事だ。それどころか普通に試合に出場していた。手負いの獣はやはりしぶといな」
当初サバナクローは出場停止処分を受けるところだったが、トレイを含めた被害者たちが『試合なら思う存分仕返しできる』と彼らの出場を望んだのだった。
「ああそれと。連中は別にお前のことを恨んではいなかったぼ」
「……本当?」
「ああ。得意な魔法に頼らずあえて身一つで挑んだ、つまり奴らと同じフィールドに立って闘ったのも大きかったのではないか?」
「そうですか……」
暫しの沈黙の後、マレウスが口を開く。
「A。決闘の前日のことを覚えているか?」
「ええ、もちろん」
「彼らを傷つけるつもりはなかった。お前のことも」
「ちゃんとあなたと話し合うべきだった。まだ互いのことをよく知らないから。自分は……
以前までの芝居がかったよそよそしさが消えた呼び方にマレウスは目を丸くし、やがて微笑んだ。
「ああ。僕もだ」
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リー・マキトータ(プロフ) - 珠梨さん» 大爆笑しました🤣 ちなみに読みは『エウシーダ』で、二つのスワヒリ語を合体させた造語です。 (4月1日 14時) (レス) id: 042fe54ac4 (このIDを非表示/違反報告)
珠梨(プロフ) - タイトルを入試だ☆と読んでしまった自分は…… (4月1日 14時) (レス) @page2 id: ac62a72ef1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リー・マキトーマ | 作成日時:2020年2月28日 9時