誰も知らない一面 ページ32
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次の日の座学ではAはひたすら睡魔と闘うこととなった。昨晩から今朝まで高熱を出した子供を看病していたおかげで寝不足だったのだ。
これまでもスラムで怪我人や病人を助けてきたが、徹夜したのはこれが初めてだった。疲労がAの目の下を黒く染め、教師や友人たちは明らかに好調ではない姿を見て心配していた。
そんなわけでAは魔法史の授業でも眠気に襲われており、普段は騒音に感じるルチウスの鳴き声ですら遠くの出来事に感じていた。
Aの両隣ではグリムと寮生が気持ちよさそうに爆睡している。そもそもこの二人は睡魔に抗う気もなく、授業が始まった途端に『さあ寝る時間だ』と言わんばかりに机に伏せたのだからどうしようもない。
「では、A」
トレインはAを指名し、すぐに彼女の顔色に気づいて驚いた表情を浮かべる。Aのほうは相変わらず完璧な解答を出していた。
「正解だ。ところで、保健室に行かなくて大丈夫かね?」
「はい、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「う、うむ……」
Aが遊びで夜更かしをするような生徒ではないことは先生たちも悟っていたが、放課後に何をしているかまでは知らなかった。まさかスラムで病人の世話をしていたなどと誰が想像できるだろうか。
昼休み。
昼食を終えたAはすぐに図書館に向かった。黒ヒョウの耳を生やした背の高い寮生が電話をしながら彼女とすれ違う。寮生の名はゾルバ。サバナクローの三年生で腕っぷしの強さと頭の良さから、後輩たちには慕われ、同期からも一目置かれていた。
「トゥファニが!? 今は!?」
《ゾルバ、落ち着いて。もう大丈夫よ》
電話の相手は母親だった。トゥファニというのはゾルバの八歳の弟である。
《Aさんが付きっきりで看病してくださって……お金も受け取らずに行ってしまったのだけど……》
「母さん待って。A?」
《ええ、Aという方よ》
それを聞いたゾルバは素早く後ろを振り返る。つい先程、すれ違った寮生が弟の命の恩人だったことを悟った彼は暫しの間、呆然としていた。
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リー・マキトータ(プロフ) - 珠梨さん» 大爆笑しました🤣 ちなみに読みは『エウシーダ』で、二つのスワヒリ語を合体させた造語です。 (4月1日 14時) (レス) id: 042fe54ac4 (このIDを非表示/違反報告)
珠梨(プロフ) - タイトルを入試だ☆と読んでしまった自分は…… (4月1日 14時) (レス) @page2 id: ac62a72ef1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リー・マキトーマ | 作成日時:2020年2月28日 9時