+１８０+私を逃したもの ページ35
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『…申し訳ないんですけど、彼らのためにこの命を、
リスクが高いと知って手を貸すのは、戦うのは、私は…お断りです。』
なんで、自分の意見を言うのがこんなに苦痛なのだろう。
主観的な感情も過去も抜きにして
客観的に見てもなんらおかしなことは言っていない。
それでもこの一言を口にするのは明確には理解しがたい重量感があった。
「なるほど、貴女が断る理由は「リスクを背負うに足る理由がない」こと…と」
不穏、その一言に尽きたが私はその言葉に頷いていた。
頷く私を見て、風くんが少しだけ悲しげな、辛そうな表情を浮かべた気がした。
しかしそれも一瞬で、瞬きのうちに彼は伏目気味に深呼吸を一つ。
再び彼が私をまっすぐ見つめ、視線が合った。
その目は何か意を決したような、覚悟を決めたような強さを秘めていた。
「ならば私は、貴女に意地悪な…
しかし、歴とした“事実”を伝えなければなりません。」
えもいえぬような、じわじわと退路を断たれているような
真綿で首を締めるような不安感を駆り立てられる。
いっそ一気にその事実を伝えてくれた方がいいのに、そう思いつつ
こちらも彼の目を見たまま、続けられる“事実”とやらを待った。
「…“逃げた貴女”を生かしたのは確かに雲雀恭弥でしょう。
ですが、貴女はどうして逃げ出すことを決めたのですか？
何が、半年近く逃げることをしなかった貴女を変えたのでしたか？」
『それ、は…、あれは…。おもちゃと、泣き声が…』
最初は、部屋に降り注いだ窓ガラスの雨に驚いた。
でも、ガラスの中に転がるロボットの形をしたおもちゃと
割れた窓ガラスの奥から響いていた外の泣き声
それらによって私は一人の空間で窓ガラスの先に視線が釘付けになった。
ぼんやりと泣き声を聞きながら立ち尽くしていると
お母さんらしき人の声も聞こえ気付けば、泣き声は止まぬまま遠ざかっていった。
その時、数か月ぶりに「母親」という概念を身近に感じた。
それは、私が母ではないこと、「由美」ではないことを思い出させた
私は何のためにここで生きているのか
…私って、何だったのか？
そこからは、私は外に出なきゃ、と
あの男の由美を生かすために私をもう一度死なせちゃいけない。
そして、私は自身の足に巻き付く結束バンドをガラス片で断ち
ガラスが飛び散ったそこへ足を踏み入れ転がるロボットを手に取った。
「これを返して、あの子を泣き止ませないと」なんて思っていたのを覚えてる。
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睡-ｽｲ-(プロフ) - 阪サッカーさん» お返事遅れました、嬉しいコメントありがとうございます！地道に更新頑張らせていただきます！ (2020年7月9日 17時) (
レス) id: deb52841c7 (このIDを非表示/違反報告)
阪サッカー(プロフ) - 面白くて、読み応えがあって、何より続きが楽しみです。お身体に気をつけて、無理しない程度に頑張って下さい。 (2020年6月16日 21時) (レス) id: d96a890ddc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：睡-ｽｲ- | 作者ホームページ：https://twitter.com/sleep_d_urtk?s=09
作成日時：2020年5月3日 14時
