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「…………」


死人門がある。

この門を幾度通っただろう。

でも、ここを通るのもこれが最後……。


「これは死体を使った結界の一種」


フレディが呟いて教えてくれた。


「穢れや冥使は、ここを越えることができないんだ」


そうか。

だからこの門を通ると、急に臭いがするんだわ。



座り込んで、二つの人型を見つめる。

……ここから先は穢れの、闇の世界。


「行こう」
「うん」


闇の世界へ。



死人門を抜けると、途端に臭気が濃くなった。

私たちの密やかな足音は、闇に吸い込まれていく。

空気が澱んでいて、自然と呼吸が浅くなる。



地下道の終わりに、地上へ向かうハシゴがある。


「姉ちゃん、先に」


言いかけてフレディは私を見た。


「……後の方がいいか。スカートだもんね」

 
そう言って、ハシゴに手をかける。


「上から落っこちてきそうだし」
「…………」


落っこちないもん……。






「フレディ、見て!!」


思わず声を上げた。


「扉が開いてる!」


開かずの扉が、ほんの少し口を開けている。

扉に駆け寄った。


「昨日まではぴったり閉じていたのに……」


手が差し込めるほどの隙間ができている。

ノブが無くても、これなら開けられそうだ。


そう思って伸ばしかけた手を止めた。


どうして開いているのだろう?今日に限って。


開かずの扉は開かないからこそ、開かずの扉なの……。

開いたら……何が待っている?


ぞくっと震えが走る。


「なんだか……手招きされているみたい……」
「ん……」


生返事に振り返ると、フレディはしきりに目を擦っていた。


「どうしたの?」
「うん……ちょっと目が……」
「目に何か入った?見せて……」
「あ、ううん。へーき、へーき!もう治った」
「そう?」


ごしごしと強く目を擦って、彼は肩に手をかける。


「呼ばれてるってのは、あながち間違いじゃないと思う……」


生返事だったが、私の話は聞いていたようだ。


「でもそれなら、急いだ方がいいかも!」


肩を戸に押し込むと、開かずの扉がゆっくりと大きくその口を開けた。

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作品ジャンル:ホラー, オリジナル作品
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作者名:蒼(そう) | 作成日時:2023年12月29日 0時

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