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「フレディ……」


その光景に、震えながら立ち上がる。


なんだか怖かった。

まだまだ何か良くないことが起きそうな気がして、たまらなく恐ろしい。

これ以上、何が起こるの?


震えながら水場に近づく。

こわばった指が、銃のトリガーをカチカチ鳴らす。



執拗な水浴びの後、どさっとフレディはその場に座り込んだ。

荒い息、肩が大きく揺れている。


「……ね……」


私の声にゆっくりと顔を上げた。

思わず少し身を引く。


「…………」


彼は疲れた表情で、でも笑顔を見せてくれた。


「ありがと、助かった」
「ありがとうなんて……助けてくれたのはフレディじゃない!」


なんだか無性に泣きたくなる。


「だい……だいじょうぶなの……血がいっぱい……」
「ほとんどは俺の血じゃないから。俺たちは免疫があるし、ちょっとなら平気。洗い流したし……多分大丈夫……」
「ごめんね、痛い思いさせてごめん!」


フレディを抱きしめた。


「わあ、濡れるよ!」
「もういや……これ以上……もういやだ……」
「…………」


彼の体は確かにびしょびしょで冷たいが、伝わる鼓動は私を慰めてくれる。

フレディは、しばらくそのままにしてくれた。


「……姉ちゃんの友達だったんだ」
「…………」


何も答えず、ただマシューの遺体を見下ろす。


リズの時と違って、なぜか涙が出てこなかった。

ただひどく、虚な感じがする。私が殺した……。


「これ」


彼は腰のポーチから小さなカードを取り出すと、私に差し出す。

前にフレディがお守りだって言ってくれたカードだ。

そのカードには魔法陣らしきものと不思議な生物、そしてバラが描かれていた。


「護符だよ。冥使ーー吸血鬼はバラを嫌うんだ。二度と起き上がらないように……」
「…………」


護符を受け取ると、しゃがんでマシューの胸の上に置く。


……一体何を思えばいい?

それでもせめて。

せめてこのバラのカードがあなたの慰みになってくれますように……。



その時、彼のズボンのポケットから何かがはみ出しているのに気づいた。

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設定タグ:名前変換オリジナル , 吸血鬼 , オリジナル   
作品ジャンル:ホラー, オリジナル作品
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作者名:蒼(そう) | 作成日時:2023年12月29日 0時

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