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「えーっと……」


残されたマシューが少し所存なさげにトレーナーの裾を捲り上げる。


「おばさんは?下で見なかったけど……」
「お母さん、おとといからお仕事で主張中なの……」
「Aの誕生日なのに?」
「うん。なんだか今、大きなお仕事を抱えているんだって……」



家には父さんがいない。

お母さんは一人で家を守っているから、とても忙しい。

寂しいこともあるけど、私ができるのは我慢くらい。

だから平気。

それに……。


「平気。アーウィンがいるし」
「ああ、あの住み込みのお手伝いさん……」


彼は顔をちょっとだけ顰めた。


そういえば、アーウィンと話しているのあまり見たことない。

リズは家に来るとよくお話してるんだけどな。

彼女に言わせると、「影のあるオトナの男」らしい。


彼は忙しいお母さんの代わりにいつでも側にいてくれる。

だから寂しくない。

それは嘘じゃないけど、やっぱり友達とは違うから。


「早く学校行きたいな……」


ポツンと本音が漏れた。


もう一ヶ月近く、学校に行ってない。

体調のいい時にはお母さんやアーウィンに教わっているけど、やっぱり学校の勉強からは随分遅れてしまう。

大丈夫かな。

学校に戻った時、ちゃんとついていけるかな……。


「そうだ!な、A!」


黙り込んだ私を元気づけるように、勢いよくベッドの端に腰掛けた。

ベッドが弾んで私も弾む。

こんなちょっとのことでも楽しくなる。


元気な人のそばにいると、自分まで元気になる気がした。

だから、リズとマシューといるのが大好き。




元々体が弱かった私は、生まれてからずっとこの家を離れていた。

小さかったからあまり覚えてないけど、遠い町の病院に入っていたんだそうだ。


少し丈夫になってきて、やっとこの家に戻って来れたのが五年前。

リズとマシューはそれ以来の友達だ。

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作品ジャンル:ホラー, オリジナル作品
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作者名:蒼(そう) | 作成日時:2023年11月25日 22時

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