恋の話

夏祭り × ｲｼｶﾜﾕｳｷ ページ7

いつもの学校帰り。
いつもの様に手を繋いで帰る私達は、高校内ではかなり有名なカップルだと思う。

「ね、あそこなんかやってない？」

祐希が少し先の神社を指さす。
少し暗いこの時間帯に、赤い光が沢山並んでいる。

『そう言えば夏祭りがあるって友達が言ってたような』

「え、そうなの、行こうよ」

背の高い祐希のために顔を斜め上にあげると、キラキラ、なんて効果音の付きそうな笑顔を向けてきた。
もちろん、その笑顔を見て断れるはずなんてなく簡単に頷いてしまう。

段差の多い石の階段を上ると、目の前に広がる賑わいは、私達の心を簡単に躍らせた。

「たこ焼き食べたい」
「あ、でも焼きそばも捨て難い」

沢山ある屋台を前に悩む祐希は、本格的に迷い出しそうだったから救いの手を差し伸べる事にした。

『両方買って半分こしようよ』

「いいの？！やった！」

いつもよりテンションが高く、子どもみたいにはしゃぐ祐希を見て笑みが零れる。

一通り屋台を見終わって空も本格的に暗くなってきた頃、真っ赤な旗を掲げる屋台が目に入る。
そこにはふわふわなかき氷の写真がプリントされていて。

『ね、最後にかき氷食べてもいい？』

少し前を歩く祐希の制服の裾を引っ張りながら言うと、いいよー、なんて笑ってくれて。

『メロンとイチゴどっちがいいと思う？』

屋台を前にして今度は私が悩む羽目になってしまった。
決まらなくて唸っていると今度は祐希が、俺が片っぽ食べる、なんて言ってくれて。
結局2つとも買うことにした。

「見てー」

かき氷を片手に祐希は舌を出す。
綺麗に緑に染まった舌に、思わず吹いてしまう。

「なんで笑うの！」

隣で騒がしい祐希に笑いが止まらなくて、仕舞いには涙まででてきた。

『祐希といるとほんと楽しい』

涙目のままそう言うと、祐希はいきなり静かになる。

「Aが笑ってくれると俺も嬉しい」

なんて歯を出して笑いながら言う。
元々整った顔の祐希が笑うと余計にかっこよくて。
これだから、イケメンは困る。

「高校卒業したら遠距離になっちゃうけど、」

『うん』

「ちゃんと俺の彼女でいてね」

『もちろん』

目が合って笑い合う。

「来年も再来年もその次の年も一緒に来ようね」

『うん！』

そう言って笑い合う私達にきっともう“遠距離”への不安はない。

この先も一緒に笑っていたいのは祐希だけだから。

【夏祭り × ｲｼｶﾜﾕｳｷ】

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