【短編集】-gift of sweet-【歌い手】 (ページ5)

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pinky macaron -nqrse ページ5

「えー、なになに？恋人の日のために頑張りモード？かーわいーい」

メレンゲを作ろうと、卵の白身と格闘中。なかなか泡立たないけど、パティシエのみなさまはどうやって作ってるんだろう。

「てか、ほんと可愛いね。メレンゲ作るとしても菜箸じゃ無理でしょ」

「……うそでしょ」

全く泡立つ気配を見せないボウルの中の卵白と、菜箸に目を落とす。
……菜箸じゃできないんだ。

「俺も手伝うから、一緒に作ろっか」

「……いいの？」

「いいよ。バレンタインなんて、あってもなくても同じだしね。一緒に作った方が楽しいじゃん？」

「なるせだいすき」

「知ってる」

料理はするけど、お菓子作りはちょっと違うというか、なんというかでうまくいかない。だから、このヘルプはとてもありがたい。

「てか、お菓子作るなんて珍しーね。普段食べもしないのに」

「やっぱり、バレンタインとか欲しいかなって思って」

「なくていいって言ってんじゃん。お菓子より美味しいご飯が食べたいです」

「当日いないじゃん」

「え？来てくれるでしょ？」

「え？その日友達とデートだよ？」

「は？来いよ」

めちゃくちゃ雲行きが怪しくなってきた。久しぶりに会うから、パスだけはしたくない。でもたぶん行くって言わないと機嫌悪くなるやつ……。

「えぇ……横暴……」

「友達連れて来ればいいじゃん。ゲスパ渡すから、それで来て。来なかったら、ぱちんってしちゃうから」

そういう脅しはちょっとよくないと思う。ファイナルとかは行くんだからいいじゃん。

なんて、ピンクになった生地をぐにぐに混ぜながら考える。