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自分の部屋でうだうだと反省会、結局あたしは悪くないなんて随分自分勝手な結論を出したあたしは、時の流れに抗えるはずもなく2月14日を迎えてしまった。
リビングのソファに力なく項垂れるあたしの隣で、かずくんが監督にもらったのであろうチョコレートとツーショットをぱしゃり。いつもは元気を貰える笑顔も、今のあたしの目には眩しく鬱陶しいだけだった。
「 かずくん、チョコいります? 」
「 え、なんで!?それオレ用じゃないよね? 」
はいそうです。これは、皆に配ったものとは違う、あたしが調理からラッピングまで全部一人でやったもの。つづるに、あげようと思ってたもの。
つづるに片想いを初めてもうすぐ1年が経つ。いつまでも隣で、この気持ちを引きずってたくもないし、何よりあたしがこのままの関係が嫌だった。だから、バレンタインっていう特別な日くらい、素直になろうかと思って。だから臣くんにも頼らずに1人で作って、包装して。だけどそれ、全部無駄になっちゃったじゃん。
あたしがどれだけ努力しても、つづるにはもうチョコレートを渡したい相手がいて。貰いたい相手がいて。何したって無駄、全部空回り。そんなんだったらいっそのこと、ゴミ箱にでも捨てちゃえばいい。
そう言ってかずくんに手を伸ばす。
そんな手を、横から大きな掌が制止した。
「 なんで三好さんに渡そうとしてんの 」
「 へ、」
「 それ、俺にあげるやつだろ? 」
ちょっと乱暴になった口調だけれど、声はいつものようにあまい。いつだってあたしをどろどろに溶かしてしまう、彼の声だ。
あたしの手を遮ったその手には、小さな箱が握られている。ああ、あの時の練習の成果か。これから渡しに行くのか。
そうだよ、ってぶっきらぼうに言い捨てて、かずくんに伸ばしていた腕をつづるに向ける。つづるはあたしのチョコレートを受け取り、そのまま流れる様に箱を置き換えた。さっきまでつづるが持ってた、あの箱だ。
「 え、つづる、これ 」
「 好きな人にあげたくてって、言ったじゃん 」
「 つづ、」
「 流石に、気付くから。あんだけ毎日好き好きオーラ出されてたら、意識せざるを得ない 」
やっぱり淡い頬がこぼす言葉に、開いた口が塞がらない。この光景、昨日のこの頃も見たような気がするけれど。
なんて言って笑うつづるは、とんでもなくかわいくて、かっこいい。
特別な日に、特別な関係。それってとんでもなく、特別だ。
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作者名:Chocolate palette.製作委員会 x他4人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2018年2月14日 21時