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オトナとコドモ / 古市左京 ページ27

*

「左京さーん!」

「何だ、お前か。」

名前を呼んだのが私だと分かった途端、興味なさそうに手元の雑誌にもう一度目線を落とした。

「何だとは失礼な!!」

少しイラっときたので、左京さんの隣に座る。
ふかふかのソファが少しだけ沈んだ。
それでも我関せず、といった感じで視線を雑誌に注いでいる。
くそう、こんなに近くに可愛い可愛い娘のような私がいるのに!!

「お前の親になった覚えはねぇぞ。」

お前全部声に出てるぞ、と笑われてしまった。
ううう、恥ずかしい。

「左京さん、何読んでるんですか?」

「あ?別にお前に関係ねぇだろ。」

恥ずかしさを紛らわす為に話題を変えたものの、バッサリ切られて話が続かない。

「あああもう!はい!これ!!」

もう待ちきれなくなって、彼の前に仁王立ちになり、小さな箱が入った紙袋を目の前に突き出した。

「…なんの真似だ」

私に見下ろされる形になった左京さん。
それが心底嫌なのか、きっと睨まれた。
さすがヤのつく仕事をしてるだけある、目つきが常人のそれじゃない。
それでも私は怯まずに続けた。

「見てわかりませんか?バレンタインですよ、バレンタイン!」

「そうじゃねぇ、何で俺なんだ。」

左京さんは意味がわからない、とでも言いたげな顔。
眉間にしわを寄せて私の言葉を待っている。

「…それは…その……」

「はっきり言わねぇと分かんねぇだろうが。」

「す、好きな人にチョコ渡して何が悪いんですか!!左京さんのばーか!鈍感!アラサーヤクザ!!」

言ってから後悔してももう遅い。
目の前の左京さんは文字通り貼り付けたような笑みを浮かべ、額には青筋を立てていた。

「黙って聞いてりゃいい気になりやがって…」

「…いや、あの…今のは口が滑ったというかなんというか…」

立ち上がる左京さんに身の危険を感じ、少し距離を取る。
じりじりと詰め寄ってくる左京さん。

「いいい一旦落ち着きましょう?ね?」

ストップ、と言いながら、自分の胸の前に両手を掲げた。
その手を左京さんに掴まれる。

「ヒィッ」

「前言撤回はさせねぇからな?」

▽→←▽



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作者名:Chocolate palette.製作委員会 x他4人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年2月14日 21時

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