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ぐんっと左京さんの顔が近づいてくる。
私は頭が追いつかなくて、ただただ間抜けな顔で彼の綺麗な顔を見つめた。
左京さんの視線は私の唇に向けられていて、
キスされる、
このシチュエーションでそう思わないはずがない。
私はぎゅっと目を閉じた。
数秒経ってから、額に柔らかい感触。
「ぁ、」
驚きすぎて、声にもならないような声が出る。
困って左京さんの顔を見た。
「娘にキスなんてできねぇからな?」
なんて悪戯っぽく笑う左京さんに、不覚にもキュンとした。
また子供扱いされて悔しいという気持ちなんかより、今の左京さんの表情がかっこよすぎて見惚れてしまったんだ。
「…もう、子供じゃありません。」
これだって、左京さんのために奮発したんですよ。
そう言って、さっき渡しそびれたチョコを差し出す。
手作りじゃないけど、沢山考えてから買ったウイスキーボンボン。
大人な左京さんにぴったり。
左京さんは包みを広げて一つ手に取り、
「んぐ、」
何故か私の口にそれを押し込んだ。
口の中でチョコが溶けて、じゅわっとお酒の香りが広がる。
そして次の瞬間、唇に柔らかいものが当たった。
左京さんの唇だ
「…っ、え?」
「あめぇな…」
私の口にチョコを押し込む時、口の端に少しだけついてしまったらしい。
そう言って唇の端を舐める左京さんは、いつも以上に色っぽくて。
驚きすぎて何も言えない私を他所に、
「…お前はもう子供じゃねぇんだろ?」
左京さんはそう言って、部屋から出て行った。
取り残された私の顔が赤いのは、お酒のせいなのか。
それとも_______
6年越しのバレンタイン / 月岡紬→←オトナとコドモ / 古市左京
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作者名:Chocolate palette.製作委員会 x他4人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2018年2月14日 21時