２７.side...トド松 ページ29
Aが安そうな服屋に入ったから、僕たちも流れで入った。
Aが見ているのはセーターで、高いところにある。
一松兄さんが、たぶん目的のものであろう厚手の黒のセーターを取って
Aに渡してあげてた。
一松兄さんも、自分なりに付き合っていきたいと思ってるんだと思う。
買ってやる、という兄さんに、Aがそれを止めてた。
一生懸命、しぐさで。
両手で服を引っ張って、首振って…なんだかかわいいな、なんて思っちゃった。
そして、その仕草に兄さんは小さく笑ってた。
たぶん、僕と同じことを思ったんだろう、とか。
自分から近付いてきてくれたのが嬉しかったのかもしれない。
僕も何か買ってあげたいなぁ。
とりあえず、兄さんが帰ってきた後にAが見てたのを買ってあげた。
これまた首を振ってたけど、いいからいいから、と言って。
渡したときに小さくぺこりと頭を下げるのも可愛くて
つい、その頭を撫でたくなった。
昔みたいに。
けど、前みたいに怯えられるのが怖かった。
店を出て歩くAに、ついていくだけ。
僕たちは、普通に三人だけで話ができると思ってた。
Aの家で、しっかり。
すると、Aの足が、止まった。
僕の足も、一松兄さんの足も。
「…なにやってんの？」
そう言って近付いてくる人。
Aが、顔を上げる。
「ねぇ、あんなことしといてまだAに関わるんだ？あんたたち」
あの男が、目の前にいる。
そいつはAの肩を抱いて、満足そうに笑っている。
その目は普通じゃない。
「Aごめんね、怖かったよね。一緒に帰ろ？家行っていい？」
そう言うと、Aが一瞬僕たちのほうを見た。
お願いだから、そいつから離れてくれ。
一松兄さんの肩が震えてる。
怒りで、だろう。
僕もだ。
Aは、下を向いた。
そうだよね、ずっと酷いことしてきた兄より
すっと優しかったそいつのほうがいいよね。
でもA、ちゃんと見て。いまの、そいつの表情を。
Aが知ってる、優しくて頼りになる【一之瀬 悠】じゃないんだよ。
「はやく、どっか行ってよ」
まるで、Aは昔から自分のものだと言うように。
僕たちを置いて歩き出す。
歯を食いしばる一松兄さんの腕を掴む。
行こう、と。
いまのあいつの顔は、狂気の沙汰じゃなかった。
Aは知らないから。
あいつの裏の顔を。
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プリン - 私の好みドストライク！ (2019年2月17日 16時) (
レス) id: d0243add66 (このIDを非表示/違反報告)
レイ - 松兄弟目当てできたのに悠を好きになった私← (2017年1月11日 1時) (レス) id: 18f2ff2d81 (このIDを非表示/違反報告)
七 - とても素敵でした！別サイトでも書いてるんですか？凄く読みたいです…urlとかって貼れますか…？ (2016年5月29日 2時) (レス) id: 898d37ed7a (このIDを非表示/違反報告)
せいや(プロフ) - アイさん» たててますよーー！！ナノでですよね？たててます！同じ人です！ (2016年2月19日 0時) (レス) id: 89311f3d00 (このIDを非表示/違反報告)
アイ - すみませんいきなりで申し訳無いのですがもうひとつサイトたてられていられますか？同じような小説を見かけました私が知るにこちら様の作品の方が先だと思われるのですが… (2016年2月13日 19時) (レス) id: 1a19365efa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せいや
| 作成日時：2015年12月2日 19時
