-20-月夜の歌 ページ23
夕食を食べ終わり、Aは一人バルコニーで月を見上げていた。
「……♪〜♪♪〜」
透き通る声。夜風に溶け込むその声は静かに夜の空へと吸い込まれていく。
今日もみんな涙を流す
曇り気味の心模様が
すべての感情を にじませる
大人になりきれない 子供みたいに
夜になりきれないのは 月のせい
なんて甘酸っぱい夜景なんだろう
キラキラと赤や黄色が静寂を
うるさく照らす
Oh Rain Beat 見えるかい?
Oh Rain Beat 僕の目が
消えるよりはやく
Oh Rain Beat 泣けぬなら
Oh Rain Beat いっそ抱いて
雨音を消して
今は 二人だけをうつして
「久しぶりに聞いたな。てめぇの歌は」
「聞かれちゃった」
そこには目を瞑り扉に寄りかかるXANXUSの姿があった。
「何かあったか」
「ん？いいや、何も…」
ゆっくりと目を開き彼女の隣に行くXANXUS。
月を見上げる彼女の肩に手を置き無理矢理自分の方を向かせた。
「俺相手に嘘つこうなんざ100年早ぇよ」
「ホント強引」
「何を隠してる。言え」
顎に手を当て目を合わせられる。自分を射抜く紅から、もう逃げることは出来なかった。
「……私の事を嫌いな眼鏡男に突っかかって来られたから…」
「それだけか」
「ーっ…！」
この男に隠し事は出来ないらしい。早く吐けと目が訴える。
「……ねえ、ザンザス…」
「あ？」
「貴方は私の事、どう思ってるの…？」
彼を見上げる瞳には、普段見せない不安の色が浮かんでいた。
「ハッ…そんな事を気にしていたのか」
「笑ったな！？人の不安を笑ったなっ！！！」
むっすーっと頬を膨らませてXANXUSを睨むA。
その顔を面白そうに見ながら膨らんだ頬をぷしゅっと凹ませ、その唇に優しくキスをした。
「ーっ……は、なっ…！？」
「ククッ…」
顔をどんどん赤くしながらワタワタし始めるA。頬を潰していた手でそっと頬を撫でる。
「信頼し、信用して隣に置いている」
その言葉は、昼間ルッスーリアに言われた言葉と同じで…
「でなければわざわざお前を探してまでここに連れて来ねぇ」
頬を遊ぶ手は少しひんやりとしていて。
「てめぇは俺の隣にいればいい」
その手は首の後ろに回され、彼の方へ引き寄せられたかと思えば温もりに包まれて。
「絶対に、俺の傍を離れるな」
彼の不器用な優しさが、声に、腕に、温もりに乗ってAへと伝わっていく。
その想いが彼の嫌う感情と知るのはまだ少し先の話…
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作者名：紅雪 | 作成日時：2019年4月7日 3時
