ヴァンパイアに恋しちゃいました【M!LK】④ (ページ44)

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やはりサーノリアとマリーの理想の実現は無理だった。
彼らに自分たちの描く理想を聞き入れてもらうのは不可能だった。
今までマリーがしてきたことは、やはり無駄だったのだ。
ヴァンパイアの王と共に逃げるマリーの目から溢れる涙は止まらない。
この先の未来はどうしようもない暗闇。
どうすればいいのか、果たしてわからないのだ。

どうにか森に引き返し、シオックの戦士達から逃げ延びたマリーとサーノリア。
けれど、銀の剣で切り裂かれたサーノリアの傷は深い。
流れ落ちた血を追って追いつかれるのは時間の問題だった。

マリー「ごめんなさい……サーノリア……。
あなたに、こんな傷を……」

サーノリア「ぅぐっ……大丈夫……だよ……マリー……。心配、しないで……」

マリーの素早い手当てを受け、サーノリアは優しく彼女に微笑みかけた。
けれども、この体ではしばらく動くことはできないだろう。
それから、彼らの間にどうしようもない沈黙が流れた。
先の見えない未来に、二人は何を言うこともできなかった。
ただ静かに、彼らは互いの手を握りしめ、泣きながら湖畔の水辺を見つめるしかできなかったのだ。

「マリー！」

しばらくたったそんな時、彼らの元に近づいてくる足音。
森の木々の間から一人の青年が息を切らして立っていたのだ。

「マリー！こんなところにいたのか！随分探したんだぞ？！」

マリー「兄さん……！！」

マリーと同じ青い目を持つ青年。
彼は、マリーの兄。
シオックの戦士としてはまだまだ半人前。
剣すらほとんど握ったことのない新人の戦士であった。
そんな彼は、ヴァンパイアと共に長の家から飛び出していった妹のマリーを追い、使い慣れない剣を片手にやってきたのだ。