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けれど、痛みは感じない。
一体どうなったんだろうか。
私は恐る恐る目を開けてみた。
A「っ……！」
すると、私の体の前に、勇斗さんの腕が見えた。
勇斗さんが、私の背後から腕を回して守ってくれていたのだ。
そして、その腕に剣が深々と突き刺さり、その向こうで太智が目を丸くして呆然と立ち尽くしていた。
太智「ぁ……ぁあ……」
体を震わせて、剣から手を放す太智。
もう少しで私を刺してしまうところだったのを、ひどく後悔している様だった。
すると、勇斗さんは腕に突き刺さった剣を握りしめ、それを勢いよく引き抜くと地面に叩きつけていた。
A「勇斗さん、腕、大丈夫ですか？！」
勇斗「こんなのどうってことない……。それより……」
そう言って、勇斗さんはそれ以上何も言わずに太智の元へ早歩きで詰め寄っていた。
そして、ただ茫然と自分の手を見つめる太智の胸倉をつかむと、その頬を思いっきり殴りつけたのだ。
A「ちょ、ちょっと勇斗さん？！」
けれど、勇斗さんはそれだけでは収まらず、地面に吹き飛んだ太智の体をまたしても無理矢理起こすと、更にその頬を殴りつけていた。
A「やめてよ勇斗さん！！」
勇斗「お前自分が何したかわかってんのか？！
もうちょっとでAを殺してたかもしれないんだぞ？！！！」
胸倉をつかんで太智に怒鳴りつける勇斗さんの気迫に、私は少したじろいだ。
こんなに怒ってる勇斗さんなんて、初めて見たかも……。
勇斗「剣を持ったこともないガキが誰かを守れるはずねえだろ！！！
そんな未熟な腕で剣なんか握るな！！！
本気で誰かを守りたいんならそんな中途半端な覚悟で戦おうなんて思うな！！！
お前のその未熟さで大切な人を失うことになるんだぞ？！！！
目の前で大切な人を失うことほどつらいことなんかないんだぞ？！！！
それがどれだけ……どれだけつらいか！！！
お前にそれがわかんのかよ馬鹿野郎！！！」
肩を震わせ、大粒の涙を流しながら、勇斗さんはそう叫んだ。
まるで、過去にとても大切な人を目の前で失ったかのような、そんな切な叫びだった。
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作者名：milkssss | 作成日時：2021年2月20日 16時
